キラ ガルキナ
帝国軍と分身、二正面作戦はやばい。
「そこの怪しい奴! 貴様何者だ?」
兵士の一人が僕を指さす。
また『怪しい奴』か! おまえらの方が、よっぽど怪しいっての!
それに……
「銃を撃ってから言うな!」
「黙れ! さっさと答えろ。さっきはわざと外してやったが今度は当てるぞ」
外れたと思ってたんだ。
「嘘付け! 完全に当てる気だったろ」
あ! 今は、それどころじゃ無かった。
分身体が回復してしまった。
「シャー」
分身が猛然と突進してくる。
「なんだ! あれは!」
「化け物か?」
「しかし、我が軍の鎧を着ているぞ」
分身体とがっぷり四つに組む。
こんな状態で攻撃されると、かなりまずい。
「何をしている! さっさと撃て」
その声は、ダサエフだな。
「しかし、隊長。片方は味方のようです」
「バカ言え。我が軍に、あんな不気味な兵士がいるか」
「ダサエフ大尉」
ドロノフの声……というより、分身。
そうか。この中にはミールの分身という伏兵がいるんだった。
「ミール。この中に分身は何体いる?」
『まもなく、十二体そろいます』
「そしたら自爆装置を……」
『待ってください。薬ができました。もうすぐ、分身を戦闘モードにできます』
「分かった」
ミールと通信している間も、分身とロボットスーツの力比べは続いていた。お互いの手がふさがった状態だ。
「おい。ドロノフ。さっき何か言い掛けたな」
「ダサエフ大尉。あの者に官姓名を訪ねてみてはどうでしょう? それで答えなければ、銃殺しても問題はないでしょう」
「それもそうだな。おい! そこでプロレスをやってる兵士。官姓名を名乗れ」
え? 分身体の大きく開いていた口が閉じて普通の人間の顔に戻った。
それと同時に、分身が僕から離れると、ダサエフに向かって敬礼する。
「自・分・は・帝・国・陸・軍・少・尉・キ・ラ・ ガ・ル・キ・ナ・で・あ・り・ま・す」
声はくぐもったままだな。
「ミール。こうなるって、分かっていたの」
『自信はありませんでしたが、まだ少しでも理性が残っていれば、軍隊の規律を優先する可能性もありましたので』
「キラ・ガルキナ少尉だと!? お前、本隊の方にいたんじゃ?」
「魔・法・使・い・を・捕・ま・え・た・と・い・う・報・告・を・受・け・ま・し・た・が・一・向・に・本・隊・に・送・ら・れ・て・来・ま・せ・ん。様・子・を・見・て・く・る・よ・う・に・将・軍・閣・下・よ・り・命・じ・ら・れ・ま・し・た」
「ゲ」
ダサエフの奴、顔を引きつらせてどうしたんだ?
『あいつ、あたしに逃げられた事を、上に報告してなかったんですよ』
なるほど。
突然ダサエフは、ガルキナの分身を指差す。
「こいつはガルキナ少尉じゃない! 分身だ! 撃て」
「あいつ、デジカメなしに、よく、見破ったな」
『見破っていませんよ。分身という事にして、始末する気です』
まさか?
「何をしている! 早く撃て!」
兵士たちは戸惑って、互いの顔を見合った。
「おまえ撃てよ」
「俺はやだよ」
「ダサエフ隊長、面倒だから、ガルキナを始末する気だぜ」
「万が一の時は、俺たちに責任取らせる気だぞ」
「冗談じゃねえぜ」
ダサエフの部下たちの、ヒソヒソ声が聞こえてくる。
部下の人望ないな……
「ええい。やらないなら俺が撃つ」
ダサエフは、近くにいた部下の銃を奪いガルキナに向けて撃った。
「な・ぜ・味・方・を・撃・つ?」
もちろん、そんな銃撃でどうにかなるわけない。
しかし、ガルキナを怒らせてしまったようだ。
ガルキナの分身は口を大きく開き、また口裂け女になった。
「シャー」
ガルキナの分身はそのまま、ダサエフに向かっていく。
「うわ! マジに分身だったのか! おまえら早く撃て」
今度は兵士たちも従った。
帝国兵たちが一斉射撃する。
だが、そんなもので止められるわけがない。
しかし、チャンスだ。
「よし、今のうちに背後から攻撃して憑代を……」
『待って下さい。カイトさん。しばらく様子を見ましょう』
「ミール、なに言ってるんだ? せっかくのチャンスなのに」
『いえ。ここは分身が暴れるに任せましょう。帝国兵の数が減って手間が省けます』
「そ……そうか」
『さすがミールさん。狡猾ですね』
「ありがとう。もっと誉めて」
いや、Pちゃんは誉めてないと思うぞ。




