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モニターに応募したら、系外惑星にきてしまった。~どうせ地球には帰れないし、ロボ娘と猫耳魔法少女を連れて、惑星侵略を企む帝国軍と戦います。  作者: 津嶋朋靖
第十六章

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ジジイに借りを作ってしまうとは……

 橋本晶を連れて傾斜路内に駆け込んだ僕たちは、催涙剤が入って来ないように大急ぎで扉を閉じた。


 扉を閉じて振り向いた僕たちは、そこで展開されている光景を見てしばし唖然(あぜん)となる。


 何をやっているのだ? こいつら……


「きゃー! いやー!」「このエロジジイ!」


「ええチチしとるのお。ねえちゃん」


 そこで起きていたのは、二人の若い女とジジイとの戦い……いや、これを『戦い』と言っていいのだろうか?


 とにかく……


「ジジイ! 何をやっている!」


 ジジイが一瞬だけ、僕の方を振り向く。


「おお! 若造、やっと来たか。わしに感謝するがよいぞ」


 そう言っているジジイに、女の一人がナイフで切りつけようとするが、ひらりと避けられる。


「いやああ! 変態!」


 いつの間にかジジイは女の腰にしがみついていた。


 女は持っていたナイフを落とす。


 いったいこれは、どういう状況なんだ?


「北村さん。あれを」 


 芽依ちゃんの指さす先に、ロケット砲が転がっていた。


「RPG7です。恐らく彼女たちは、伏兵なのでしょう。私たちが第二層を制圧して安心しているところを見計らい、ここから狙い撃ちしようとしていたと思われます」

「なるほど。それは分かったが、なぜ彼女たちはあんな格好をしているのだろう?」


 どんな格好かと言うと、ミールの分身体が戦闘モードになった時に着けている、胸と腰だけをかろうじて覆っている本当に防御効果があるのか疑わしい鎧。


 つまりビキニアーマーだ。


 なんでこんな裸同然の格好をしているのだ?


「おそらく、北村さんを悩殺しようとしていたのでしょう」

「悩殺?」


 見くびられたものだな。ミールの分身体に見慣れてしまった僕が、この程度で悩殺されるわけないだろう。


 たぶん悩殺されないと思う。


 悩殺されないんじゃないかな?


 まあ、ちっと覚悟しておこう。


「さっき私たちは、扉の前で油断していました。あそこを狙われたらアウトでしたが、その前にルスラン・クラスノフ博士が彼女たちを見つけて、このような状態になったのかと思われますね」


 くそ! ジジイに借りを作ってしまうとは……


「ジジイ、感謝する。感謝はするから、セクハラはやめてやれ。それはジュネーブ条約違反だ」

「何を言う。ジュネーブ条約が禁止しているのは捕虜虐待じゃ。こいつらが捕虜に見えるか?」


 え? 見ていると、女たちは一度落としたナイフやサーベルを拾ってはジジイに切りかかっている。


 そしてジジイにセクハラされて、また武器を落とす。


 落とした武器を拾ってまた攻撃……


 この繰り返し……


「見ての通り、ワシとこいつらは戦闘中じゃ。従って捕虜ではない。捕虜ではないからジュネーブ条約は適用されない。そして戦闘中であるから、ワシがどんなエロいことをしても許されるのじゃ」


 いや、何かが違うぞ。


 これは戦闘なんかではない。


 戦闘の名を借りたセクハラだ。


 一人の女が、床に転がっているロケット砲に駆け寄る。


 しかし、一瞬早く芽依ちゃんが先回りしてロケット砲を踏みつけ、女にショットガンを突きつけた。


「降伏しなさい」

「く! 誰が降伏など……」


 芽依ちゃんは、彼女の仲間を襲っているジジイを指さす。


「降伏して捕虜になるなら、あの人から守ってあげます」

「え? そうなの? 降伏する! します! だから、あのジジイなんとかして!」


 数分後……


 二人の女性兵士に手錠をかけた後、ジジイに釘を刺しておいた。


「いいか、ジジイ。よく聞け。これで彼女たちは捕虜だ。捕虜である以上ジュネーブ条約で保護される。セクハラを働いたら、その場で処罰するからそう思え!」

「ふん! 何がジュネーブ条約じゃ! ここは地球ではないぞ。ジュネーブなんて都市はどこにもないわ」

地球人(テラナー)であるなら、宇宙に出て来てもジュネーブ条約は守れ!」


 確かにジジイの言う通り、ここは二百年後の太陽系外地球類似惑星だが、リトル東京では帝国に対してジュネーブ条約を守る事を一方的に宣告している。


 帝国は『自分たちは地球人ではない』と言い張っているので、そんな事は無視しているが…… 

 

 橋本晶の方を見ると、すでに催涙剤の影響は治まっているようだ。


「橋本君。目の方は大丈夫かい?」

「はい。お見苦しいところをお見せしました」


 ちらっと、捕虜になった女性兵士たちの方に目をやる。


「さっきは油断しました。下手すると私たち、彼女たちにズドンとやられるところだったのですね。ルスラン・クラスノフ博士には感謝しないと」

「おお! わしに感謝するとは殊勝な心掛けじゃ。では礼としてパフパフさせてくれ」


 パフパフするとはどういう事をするのか分からないが、ジジイは目にも止まらぬ早さで彼女に向かっていく。


 だが、橋本晶の居合い抜きはもっと早かった。


 僕には何が起きたのか把握すらできなかったが、ジジイは突然、彼女の一メートル手前の床に大の字になって倒れる。


 ジジイが倒れたまま動かないのを確認すると、橋本晶はいつの間にか抜いていた日本刀を鞘に収めていた。


「安心せい。峰打ちよ」


 いや、今回は峰打ちじゃなくて、切っちゃっても良かったのだぞ。

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