人の話聞けよ!
ナーモ族たちがいるところへ着くと、二人の爺さんが口論している真最中だった。
一人はミールのお爺さん。もう一人は誰か知らんが妙に身なりがいい。
「どうかしましたか?」
と、うっかり声をかけてしまった。
案の定、ナーモ族は慌てて隠れようとする。
やっぱ、ロボットスーツは怪しいよね。
これで日本の町を歩いてたら、五分で通報されるだろう。
あるいは、コスプレと思われるかな……
「驚かしてすみません。こんな恰好をしていますが、僕はあなた達の味方です」
木材の陰から、ミールの爺さんがそうっと顔を出す。
「そこにいるのは、ミールさんのお爺さんですね。僕は先ほど、お孫さんから紹介された日本人です」
ようやく、安心して出てきてくれた。
「だから、こんな事になったのは、すべてお前の孫のせいだ」
出てきてくれたのはいいのだが、また口論を再開した。
今の状況分かっているのかな?
「なんて事を言う。この恩知らずが! ミールはナーモ族のために、立派に戦ったのだぞ。それを疫病神のように……」
「あの……」
「疫病神ではないか。戦いに勝ったならいいが、負けておめおめと帰ってきおって。負けたのなら、戦場で死んでいれば、よかったんじゃ」
「あのお……」
「なんじゃと! もう一度言ってみろ!」
「あのですねえ……」
「ああ、何度でも言ってやる。お前の孫は……」
人の話聞けよ!
バーン!
拳銃を上に向けて撃つと、さすがに二人とも静かになった。
「今、そんな事やっている場合ですか? いつここに帝国兵が戻ってくるか分からないんですよ。口喧嘩する前に、やるべき事がいっぱいあるでしょ」
「そうだったな」
「いや、お見苦しいところを見せた。孫が世話になったそうですな。日本の人」
僕はミールから預かってきた、巾着を差し出した。
「これはミールさんから預かってきた薬袋です。中に傷薬と包帯が入ってます。これで怪我人の手当をお願いします」
ミールのお爺さんに薬袋を渡すと、僕は鎖でつながれている人たちの解放に向かった。
鍵が見つからないので、とりあえず鎖を引きちぎって救出してみたが、生きていたのは二十人ほど……
みんな酷く衰弱している。
ここから動かすのは無理だな。
となると、ここを死守するしかない。
通信機でPちゃんを呼び出した。
『ご主人様。どうしました?』
「ナーモ族たちが、酷く衰弱している。何か、いい薬はないか?」
『地球人の薬では、ナーモ族の体質に合いません。ちょっとミールさんと代わります』
「頼む」
『ミールです。薬が必要なのですか?』
「ああ。と言っても、僕は医者じゃないから、どんな薬が必要なのか……」
『今、レッドドラゴンの肝を使って魔法強化薬を作っていますが、副産物で生命力回復薬もできます。もう少しで出来上がりますから、待っていて下さい』
とにかく、今は薬ができるのを待つしかないな。
離れたところから、散発的に銃声が聞こえてくる。
まだ、同士討ちをやっているようだ。
ドローンからの様子だと、今のところ帝国兵が近づいてくる様子はないが、いつやってくるか分からない。僕は木材や石材を集めて急ごしらえのバリケードを作った。
途中から、まだ動けるナーモ族が手伝ってくれて、三十分ほどで完成。
バリケードを作り終えてから、僕はエシャーのところへ行くことにした。
僕が離れている間に、また爺さんたちが喧嘩しないか心配だが、エシャーを早く檻から出してあげないと……
ちなみにミールの爺さんと喧嘩していたのは、村長らしい。
どうりで身なりがいいと思った。




