銃を持っている奴は分身だ! 持っていない奴はよく訓練された分身だ!
ドロノフは再び屋敷に戻ってきた。
『よお。ドロノフ。翼竜はどうだった?』
『ダサエフ大尉。それどころじゃありません。魔法使いの分身どもが潜入しています』
『なに!?』
『すでに何人もの犠牲者が出ています。分身魔法を見破る道具は、まだありますか?』
『バカ野郎! あれは、全部お前の隊に預けただろう。ここには一つも残ってない』
それは好都合。
『そんな物なくたって、あの小娘を見かけたら捕まえればいいだけの事だろ』
『それが、魔法使いは、我々帝国軍兵士の分身を作っているのです』
『なんだと!?』
別の分身に持たせたカメラに切り替えた。
火を囲んで酒を飲んでる兵士たちが映る。
『おい! 大変だ! 魔法使いの分身が潜入しているぞ』
『なに?』
また、別のカメラに……
『魔法使いの分身が潜入したぞ! 分身は我々と同じ姿をしている。気をつけろ!』
よしよし。噂は広まっているな。
「カイトさん。分身がいる事をばらして、どうするのですか?」
「ご主人様。これじゃあ、せっかく潜入させた分身が……」
ミールとPちゃんに、僕はスマホをかざした。
「うん。分身がいることが分かっちゃったね。でも、それが分かったとして、どうやって分身を見分けるんだい? これがないのに」
「あ!」
「なるほど」
そう。帝国軍の中に、分身が紛れ込んでいる。
しかし、見分ける方法がない。
それが知れ渡ったらどうなるか?
こうなると、隣にいる戦友も、上官も部下も信用できなくなる。
どいつが、分身か分からないから……
さらにドローンからの狙撃で兵士が倒されていけば、いつ自分が分身に殺されるかという恐怖に駆られて、同士討ちを始めるかもしれない。
ちなみに分身たちは、銃は使っていない。
ただ、ひたすら『分身がいるぞ』と噂を広めているのだ。『類似品にお気を付け下さい』と類似品に書くようなもんだね。
この場合、分身たちには銃を持たせない方がいい。
分身は銃撃してくる。
ならば、銃を手にしている奴が分身だと兵士たちは思うだろう。
銃声が、ここまで聞こえてきた。
どうやら、同士討ちが始まったらしい。
PC画面に目を向ける。
分身の一人が、スマホを出して適当な兵士に向けた。
『あいつだ! あいつが分身だ』
『え? おれ……』
指を挿された兵士は、意味が分からないでキョトンとしている。
そこへ他の兵士たちが殺到してきた。
『この分身野郎!』
『ぶっ殺してやる!』
『違う! 俺は分身じゃない』
『黙れ! 分身はみんなそう言うんだ』
「カイトさん、さすがですね。分身に、こんな使い方があるなんて思いつきませんでした。籠城戦の時に、この手を使っていればもう少し持ちこたえられたのに」
「ところで、ミール。分身は撃たれても平気なのかい?」
「まったく平気というわけではありません。ただ、複雑な臓器がないので、心臓など人間の急所を突かれても大丈夫です。ただ、身体を動かすために筋肉のような組織があって、それを破壊されると動けなくなります。そして、身体の半分以上を削られたら消滅します」
不死身ではないんだ。
「それとですね」
ミールはポケットから木札のような物を取り出した。
なにやら複雑な文様が描きこまれている。
「分身の胴体に、この木札が入っているのです。これを破壊されたら、消滅します」
使徒のコアみたいな物か。




