帝国兵は、皆殺しだ!
「ミール。ダサエフに、翼竜を今すぐ見たいと言わせてくれ」
「なるほど。案内させるのですね」
「ああ。熱源が多すぎて、このままじゃ時間がかかりすぎる」
『その捕獲した翼竜とやらを、見せてもらってよろしいでしょうか?』
『いいぜ』
ダサエフは、衛兵の方を向いた。
『お前。ドロノフを案内してやれ』
ドロノフは、衛兵に案内され、屋敷から出ていく。
よし、PC画面をドローンカメラに切り替えて……
屋敷から出てきた赤外線源をマークする。
赤外線源は、屋敷から数百メートル移動していった。
不意に動きが止まる。
エシャーのところへ着いたのか?
「ひ……ひどい……せっかく……逃がしたのに……」
ミール? どうしたんだろう? 蒼白な顔をしている。
PC画面を、ドロノフのカメラに切り替えた!
これは……!!
地獄絵図……?
大勢のナーモ族が、鎖に繋がれ拷問を受けていた。
すでに死体となって転がっている者も少なくない。
生きてはいるが、手足を切り取られ泣き叫んでいる者もいる。
泣き叫ぶ子供を、兵士が射殺した。
胃から、何かがこみ上がってくる。
僕は席を立つと背後の茂みに駆け込んだ。
吐いた。
さっき食べた物と、胃液の混じった物を茂みの中にぶちまけた。
今、見た光景はなんだ?
現実に起きている事なのか?
夢じゃないのか?
「ご主人様。大丈夫ですか?」
Pちゃんが差し出してくれたタオルで口のまわりを拭うと、僕は再びPCに向き直った。
夢じゃなかった。
人間は、ここまでひどいことをできるのか?
違う。
こいつらは人間じゃない。
人間に、こんなひどいことができるものか!
『ドロノフ。お前もやってかねえか?』
ドロノフに下卑た声をかけた男は、ナーモ族の女の子を凌辱している最中だった。
一人だけじゃない。
キャンプファイヤーのような大きな火を囲んで、何人もの帝国兵がナーモ族の女の子達を凌辱していた。
「ミール。ドロノフに言わせてくれ。今は仕事中だと」
「あの……これを止めさせるわけには……」
「それは、今から僕がやる。ドロノフは、このまま行かせてくれ」
ミールは黙って頷く。
辛そうな顔をしていた。
このナーモ族の中には、ミールの家族、親族、友達がいるのかもしれない。
いや、そうじゃなくてもミールはこの村に住んでいたんだ。
みんな顔見知りなんだろう
だけど、ここでドロノフの分身を使っても止める事はできない。
止める方法は、一つしかない。
僕はドローンのコントローラーを取り、一機の自動操縦を解除し手動に切り替えた。
高度を下げていく。
地獄絵図の直上にドローンを静止させた。
さっき、ドロノフに声をかけた男は、遠ざかっていくドロノフに向かって何かを叫んでいる。その男の背後から、延髄に照準を合わせた。
トリガーボタンを押す。
消音器によって音を消された銃から放たれた二十二口径の弾丸が、男の延髄を破壊した。
男は、自分に何が起きたのかも分からないまま倒れる。
仲間が死んだというのに、他の男たちは気が付かないで残虐行為に勤しんでいた。
いや、二人ほど気が付いた奴がいた。
『おい、どうした?』
『もう酔いつぶれたか。だらしねえな』
そう言うと、二人は興味を無くして酒を飲み、地面に横たわっている女の子に手を伸ばす。
その汚らわしい手が、女の子に触れる前に背後から弾丸を撃ち込んだ。
どうやら、兵士達はかなり強い酒を飲んでいるようだ。
仲間が倒れても、気が付かないか、酔いつぶれたと勘違いしてゲラゲラ笑うだけ。
その男たちに、一人ずつ背後から弾丸を撃ちこんでいく。
途中で弾が無くなり別のドローンと交代したが、狂乱状態にある男たちは、まだ気が付かない。
最後の二人が、ようやく異変に気が付いたがもう遅い。
ミサイルの発射ボタンを、僕はためらうことなく押した。
二人の男は炎に包まれる。
苦しさのあまり転げまわっていたが、やがて動かなくなった。
僕の考えは甘すぎた。
できれば、帝国兵もなるべく殺さずにエシャーを救出しようと考えていた。
でも、無理だ。
今、助けなきゃならないのはエシャーだけじゃない。
このナーモ族たちも助けるには、帝国兵は皆殺しにするしかない。
殺さなければ、どこまで追いかけて来る。
話し合いなど無駄だ。
生きのびたければ、殺すしかない。
帝国兵は、皆殺しだ!




