ストーカー
『名前はカイト・キタムラ。カルル・エステスが落とした船に乗っていた奴だ。エステスは見つけても、迂闊に手を出すなと言っていた。かなり、ヤバイ奴らしい』
こいつに『ヤバイ奴』呼ばわりされるのは、なんかヤだな。
『こんなヤバイ奴相手に戦って、十二人も生きて帰ってきたのなら、むしろ上出来だと言うべきだな』
実際は、もっと生きてるけどね。ただし帰れないけど……
でも、出発前に見た時には三人ほど死んでいた。
とうとう僕も、殺人童貞卒業か……
『よし。夜が明けたら、部下を連れてこいつを探し出せ』
『あの、手を出さないのでは……』
『当たり前だ。俺は探し出せと言っただけだ。見つけても手を出すなよ。これ以上部下が減ったら、かなわん』
「自分で、減らしたくせに……」
ミールは、何を言ってるんだろう?
『見つけたら、気づかれないように見張っていろ。とにかく監視しているだけでいい』
ストーカーかよ!
まあ僕が今やってることも似たようなものだけど……
『エステスの話では、凄いお宝を持っているそうだ。マ……マ……なんて言ったっけ?』
副官が耳打ちする。
『そうだ。マテリアルカートリッジだ。奴を見張り、隙を見てそれを盗み出すんだ。そして、手に入れたら俺のところに持ってこい。他の奴に見つからないようにな』
『あの……マテリアルカートリッジとは、どのようなものですか?』
『俺が知るか。エステスが言うには凄い宝だという。そんな良い物なら俺の物にしてやるぜ』
いや、おまえが手に入れても猫に小判だって……
「カイトさん、あんな事言っていますけどどうします? 今のうちに、始末しておきますか?」
「ご主人様。私もミールさんの意見に賛成です。ドロノフに持たせた自爆装置のボタン、ポチっとしちゃいましょう、今すぐ」
おいおい、可愛い女の子が二人して物騒な事言わないでほしいな。
まあ、このダサエフという男、今始末しておけば付け狙われなくて済むわけだが……
「今はだめだ。エシャーの救出が難しくなる」
ドロノフの事はミールに任せて、僕はPC画面を他のカメラの映像に切り替えた。だが、エシャーはまだ見つかっていない。
上空には三機の飛行船タイプのドローンを浮かべて、見つかった赤外線源を、ミールの分身たちが虱潰しに探しているのだが、人や馬など雑多な赤外線源が多すぎるのだ。
隣席からミールが僕の肩を叩いた。
「カイトさん。ダサエフが興味深い事を言っています」
「興味深い事?」
「ドロノフに、翼竜に乗ってみないかと」
「翼竜? それって……」
「なんでも、帝国では近いうちに竜騎士団を編成するから、使えそうなベジドラゴンを見つけたら捕獲するように命令されていたそうです」
あいつら……エシャーにそんな事をさせようというのか……
だが、好都合だ。
それなら、エシャーが殺される心配はない。
PCの画面をドロノフのカメラに切り替えた。
『ダサエフ大尉、翼竜など飼い馴らせるものでしょうか?』
『だから、ドロノフよ。お前で実験するんだよ。なに、おまえなら落ちて死んでも惜しくはない』
『そんな……』
『心配すんな。ベジドラゴンというのは、人間の言葉が分かるらしいぜ。だから、鞭で引っ剥いて恐怖を植え付けてやれば、後はおまえの言葉通りに動くようになる』
鞭で叩くだと……あの優しいエシャーを鞭で叩くだと!
やはり、ここでドロノフを自爆させようか……いやいや、落ち着け。
その前に助け出せばいいだけのことだ。




