尋問
バシャ!
さっき、隊長と呼ばれていた男に水をぶっかけてみた。
歳の頃は二十代後半ぐらいで、鼻の下にうっすらと髭を生やしている男だ。
「な……なんだ?」
男は周囲を見回す。
自分が半裸で、手足を縛られ地面に転がされている状態だという事を認識するのを待ってから、僕は男の鼻先に拳銃を突き付けた。
「質問に、答えてもらおう」
「誰だ? お前」
ロボットスーツを脱いでいるから、さっき戦った相手と分からないようだな。
まあ、いい。
「質問しているのは僕だ。まず、お前の名前は?」
「セルゲイ ドロノフ。それ以上は、何も答えんぞ」
「そうか。それなら、他の奴に聞く」
トリガーを引いた。
轟音が鳴り響く。
ドロノフの顔が、恐怖に歪む。
「いけない。一発目は空砲だった」
二発目を薬室に送り込み、もう一度突き付ける。
「こ……殺すなら、さっさと殺せ。何も喋らんぞ」
「じゃあ、喋りたくなるようにしてやろう」
拳銃を、ドロノフの左手に向ける。
このまま指を一本ずつ……
「待って下さい。カイトさん」
ミールが僕の肩に手を置いた。
「止めないでくれ」
「でも、本当はやりたくないのでしょ? 拷問なんて」
確かに……
「しかし、そうしないと……」
「あたしに、任せてもらえませんか」
「どうするんだ?」
「まあ、見ていて下さい」
ミールはしゃがみこんで、ドロノフの顔を覗きこんだ。
「な……なんだ? 色仕掛けでも、やろうというのか?」
「ドロノフさん。あなたには、四つの選択肢があります」
「なに?」
「一つは、素直に聞かれた事を喋る」
「ありえんな」
「一つは、拷問されて白状する」
「だから、拷問されても喋らん」
「一つは、舌を噛んで自害する」
「ふん! それも悪くないな」
おいおい、ドロノフ。言ってる事はかっこいいが、足が震えているぞ。
「では、最後の一つ。魔法であなたの分身を作って、何もかも喋ってもらいます」
「なに?」
そんな事できるのか?
「分身はあなたの記憶を持っていますが、行動はあたしの思い通りになります。したがって、質問された事は、なんでも喋っちゃいます」
「う……嘘をつくな」
「嘘だと思いますか? では、城攻めの時に、帝国軍の情報がなぜ漏れたと思います? あたしがこっそり城から出て、娼婦に化けて帝国軍陣地に忍び込んで、士官の分身を作っていたからですよ」
「……」
ドロノフの顔色が変わった。
「ま……まさか!? あの時、抱いた女……」
不意にミールが振り返って僕を睨んだ。
なんだ?
「勘違いしないでくださいね。抱かせたのは、あくまでも分身です。本体のあたしは、清い身体ですからね」
誰も、そんな事、聞いてないって……




