宇宙機母船(天竜過去編)
直径二メートルの金属球。それにエンジンノズルや砲身が着いている。そんな物体がエアロックの中にあった。これが戦闘用宇宙機だそうだが、僕のイメージしていた物とはかなり違う。まあ、宇宙で使うのだから、翼のような空力学的構造物なんて必要ないのは分かるけど……球体って、昔のロボットアニメに出てくる雑魚メカじゃないか。
「これが、これから君達に操作してもらう機体です」
エアロックに集められた、僕を含めた十九人の少年少女の前で、楊さんが戦闘用宇宙機について説明していた。その隣にアーニャが立っている。
「操作法については、すでにブレインレターで君達の脳に送り込んであるので、簡単なスペックだけを説明します。この機体のメインエンジンはプラズマコア対消滅エンジン。最大加速二十G。武装は三十ミリ無反動電磁砲と五十メガワット自由電子レーザー砲。電磁砲を使う時は、後ろに気を付けて下さい。反動を打ち消すための弾を発射するから」
そこでアーニャが、コントローラーを楊さんに手渡す。
「この機体は、遠隔操作なので破壊されても操作している君達が死ぬことはありません。それでも、可能な限り機体は大切にして下さい。このボディはホイップルバンパーで守られているので、多少のデブリなら問題ないけど、電磁砲を撃ってこられたら防ぎ切れません。電磁砲を撃たれたら、可能な限り砲弾との相対速度を小さくして……」
楊さんが機体にコントローラーを向けた。
ボン!
機体片面が、大きな風船のような物に包まれた。
「このエアバックで防いで下さい」
エアバックだったんだ。
僕は手を上げて質問した。
「それはエアバックなのですか? バリュートではないのですか?」
「バリュートは大気圏突入や、エアブレーキなどに使う物です。このエアバックには、それだけの耐久性はありません」
僕の隣にいた高校生ぐらいの女の子が手を上げた。
「アンチ デブリ シールドは無いのですか?」
「ありません。あれを付けると、重くなりすぎます」
それから、いくつか質問に答えた後、楊さんは母船の説明を始めた。
「宇宙機母船の現物は、現在プリンターで出力中です。したがって、君達には映像だけ見てもらいます」
大型スクリーンに映ったのはシリンダー状の船体。その船体表面に、先ほど説明のあった戦闘用宇宙機十五機が張り付いている。
「この母船を四隻プリントしています。君達は一隻に五人ずつ乗り込んで《天竜》から、十万キロ離れた宙域で宇宙機を操作してもらいます」
やたらと太った少年が手を挙げた。
「一隻につき五人でいいのですか? 見たところ一隻につき、十五機の機体がありますが……」
「十五機のうち、十機は予備機です。操作中の機体を破壊されたオペレーターは、すぐに予備の機体を出撃させて下さい」
僕は手を挙げた。
「一隻につき五人と言われましたが、僕たちは十九人しかいません。一隻だけ、四人になりますが……」
僕の質問には、アーニャが答えた。
「私が二十人目のオペレーターです」
「え?」
「よろしくね。白龍君」
「ども……」
それから十時間後、四隻の母船が出力された。
船はそれぞれ《青竜》《朱雀》《白虎》《玄武》と名付けられ、僕達二十人はそれぞれの船に割り振られることになった。
僕が乗り込むことになったのは《朱雀》。船内に入ってみると、さっき楊さんにi人数について質問していた太った少年が、僕より先に乗り込んでいた。
それにしても、どっか見たような顔だな? まあ、船内に百人しかいないのだから……あ! いつも配給食糧を届けにきていた人だ。
「よお! 遅かったな。チビ」
チビって……あんたが、大き過ぎるだけだろ。
「俺は王だ。短い間だがよろしくな」
王は手を差し出してきた。
感じの悪い奴だけど……ここでトラブルを起こすわけにはいかない。
「章です。よろしく」
僕は王と握手した。その直後、背後からかん高い女子の声が響く。
「ちょっとなによ! この船! なんでこんな男と一緒になるのよ! 信じられない!」
入り口を見ると、二人の女の子がいた。一人は、長い黒髪をポニーテイルに纏めた、キツイ目をした女の子。背は僕より高い。この子さっき楊さんに『アンチ デブリ シール ドは無いのか』と聞いていた子だな。しかし彼女の言う『こんな男』って僕の事?
もう一人の女の子は、髪を三つ編みにした眼鏡っ娘。ポニテの権幕に、ただひたすらオロオロしている。
一方、彼女達を見た王は険悪の表情を浮かべた。『こんな男』とは王の事らしい。
「いやなら、船から降りるんだな。俺だって、おまえと一緒の船はゴメンだ」
「なんですって!」
一触即発と思ったその時、楊さんが乗り込んできた。
「趙 麗華さん。何を騒いでいるのか知らないけど、もう船を変えている時間はないの。短い時間なんだから、仲良くしてもらえないかしら」
趙 麗華と呼ばれた女の子は、納得いかないようだ。王を指差し……
「そんな事言ったって、このデブは私の着替えを覗いたのですよ」
「デブじゃない。俺の名は王 博文だ。それにあれは事故だ。好き好んで誰が、お前なんかの着替えなど覗くか!」
「なんですって!」
ドン!
楊さんが突然壁を叩いた。
「やめなさい! もう出航するわよ」
「あの、楊さん」
「どうしたの? 白龍君」
「まだ、一人足りないのですが」
「え?」
楊さんは船内を見回した。
「アーニャは?」
「ここです」
声は、楊さんの背後から……
「なんか喧嘩をしているみたいだったので……入りにくくて」
アーニャが入ってきた。
王が趙を睨みつける。
「ほら見ろ。お前が怒鳴っているから、アーニャが怖がっているじゃないか」
「あんたみたいな変質者がいるから、入りにくかったのよ!」
再び睨み合う二人……
「やめなさい!」
楊さんの雷が落ちて二人とも黙った。
そんな騒ぎがあったせいか、《朱雀》の出航は他の三隻より少し遅れることになる。
Pちゃん「やっと再起動しました」
ミール「一週間以上かかりましたね。それにしても、最近更新遅いですね。やはり『霊能者のお仕事』を書いているからですかね?」
Pちゃん「それもありますが、作者は「時空穿孔船リゲタネル」以来、十年ぶりくらいに宇宙空間での戦闘シーンを書くので苦労しているみたいです」
ミール「宇宙での戦闘シーンって、そんな大変なのですか?」
Pちゃん「科学考証をきっちりやる必要がありますので」
ミール「でも、科学考証なんて気にする読者なんていますかね?」
Pちゃん「作者自身が気にする人なのです」
ミール「じゃあ、作者は所謂SF警察?」
Pちゃん「ネットではそういう事はやっていませんがね、リアルでやっちゃったのですよ。昔、シナリオ教室にいた時、同じ教室にいた人の書いたSF作品にケチつけて、その後の飲み会で気まずくなった事がありましてね。それ以来、人の作品の科学考証に突っ込むのは控えるようにしたのです。ただし、自分の作品は最初に読むのが自分なので、科学考証には拘るのです」
ミール「なるほど。ひょっとしてカトリさんが同人仲間とトラブルを起こしたというのは……」
Pちゃん「はい。作者自身の体験です」




