潜水艦
指令室に行くと、香子とミール、芽衣ちゃん、ミクが先に来ていた。
メインスクリーンには、偵察用ドローンが捉えた敵艦隊の姿が映っている。
敵の数を香子に尋ねた。
「大小五十隻ほど。ほとんどが木造船だから、たいしたことないけど、問題はこいつ」
木造船の艦隊の中心付近に、一隻だけ異様な船がいた。
「装甲艦?」
「三十年前にプリンターで作った装甲艦を出してきたのよ」
ひょっとして、こいつか?
「艦名は分かるかい?」
「帝国語で《マカロフ》と書いてあるわ」
やはり、こいつか。しかし……
「三十年前の機械が、動かせるものなのか?」
「たぶん、カルルが盗み出してきたカートリッジで、プリンターを動かして交換部品を作ったのね」
「しかし、一隻だけだろ。先に木造船だけでも沈めて丸裸にしてやれば……」
「そうはいかないのよ。あいつ対空レーザー砲を備えているわ」
「対空レーザー!?」
「最初に送ったドローンは、すぐにこいつに落とされてしまった。だから、プリンターでステルスドローンを出して送り込んだのだけど……」
その直後、ドローンからの映像が消えた。
「少しでもレーダーに捕まったらこの様よ」
「ロボットスーツの装甲なら……」
「計算だと、同じ個所に五秒以上照射されたら貫通されるわ」
なるほど。成瀬真須美の言う通り厄介だ。
「いったい、エネルギーに何を使っているんだ?」
それに答えたのは楊 美雨。
「核融合炉です」
「核融合!」
「三十年前に戦った時、同形艦を撃沈してその構造を調べました。二十メガワット級の核融合炉を使っているのを確認しています」
こっちが太陽電池とかLNGとかでチマチマ電気を使っているのに、向こうは核融合でふんだんに電力が使えるのか。勝負にならん。
「大丈夫です」
僕の心を読んだかのように楊 美雨は言った。
「北村さんの持ってきてくれたブリンターのおかげで、こちらの核融合炉も稼働できるようになりました。これで、こちらのレーザー砲も使用できます」
「そうですか」
「ただ、あの装甲艦は鏡面装甲のためレーザーもあまり効果ありません。レーザーの撃ち合いは、こちらが不利かもしれません」
では、実体弾で攻撃した方がいいか? いや、ミサイルや砲弾ではレーザーで落とされる。となると、使えるのは……
十分後……
僕と芽衣ちゃんはロボットスーツを装着して、狭い通路を進んでいた。その後ろからミールとミクが着いてくる。Pちゃんには、指令室に残ってもらった。
「ミール疲れないかい?」
途中、僕は振り向いて尋ねた。
「大丈夫です。日頃、鍛えていますから……」
ミールはガッツポーズで答える。
「そうか。疲れたら言ってくれ。僕が運ぶよ」
「ああ! 急に眩暈が!」
おい……
わざとらしく通路上にへたり込んだミールを、僕はお姫様抱っこで抱き上げた。
「ああ! お兄ちゃん! あたしも眩暈が!」
ミク……おまいもかい……
「ミクちゃんは、私が運んであげますね」
通路上でへたり込んでいるミクを、芽衣ちゃんが抱き上げる。
「あ! ちょ……芽衣ちゃんじゃなくて、お兄ちゃんに……」
そのまま、僕らは通路を一キロほど進み、潜水艦の停泊しているプールに着いた。
プールには、香子と芽衣ちゃんが言っていた通り、潜水艦が浮いている。
小型と聞いて、最初は特殊潜航艇みたいなのを想像していたがそれよりは大きい。
全長五十メートルくらいはある。
潜水艦の周囲では数名の整備員が働いていた。
空や地上から装甲艦に近づくのが難しいので、この潜水艦で攻撃をかけようという作戦だが……
「この潜水艦、まだ動かせないのですか?」
整備員の一人が振り返る。
「心配ありません。修理はもう終わりました。今、魚雷の積み込みと最終チェックを行っているところです」
「そうでしたか。ご苦労様です」
その時、司令塔のハッチが開いた。出てきたのは……
「おお! お兄さん達、来たね。さあ、乗って」
レイホーが手招きをしていた。




