表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モニターに応募したら、系外惑星にきてしまった。~どうせ地球には帰れないし、ロボ娘と猫耳魔法少女を連れて、惑星侵略を企む帝国軍と戦います。  作者: 津嶋朋靖
第九章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

221/690

逃避行 (過去編)

「城に戻れ! 僕を城に戻すんだあ!」


 城の上空でホバリングしているヘリに芽衣が戻ると、身なりの良いナーモ族の少年が騒いで、侍従と女官を困らせていた。


「香子さん。何があったのですか?」

 

 芽衣は、操縦席の香子に尋ねる。


「どうも、こうも……みんな王子様には遊覧飛行だと言って、このヘリに乗せようとしていたのよ」

「ええ?」

「無理もないわ。本当は、城が落ちるから脱出するなんて言えないわね」

「でも、王子様は知っているみたいですよ」

「寸前で、誰かが王子様にばらしたらしいの。それで王子様は城中を逃げ回って、やっと捕まえて連れてきたのよ」

「それで、遅くなったのですね」

 

 振り向くと、少年は涙を流していた。


「嫌だ! 僕を城に戻して……みんな死んじゃう……殺されちゃう……」


 パシッ!


 乾いた音が響いた。


 さっきから黙っていた王妃が、王子の頬を叩いたのだ。


「母上?」

「男の子がいつまでも、泣いてるんじゃありません!」

「でも、このままだと、父上も、叔父上も、ミールもみんな殺されてしまいます」

「あなたが、城に戻って、何ができるのです?」

「それは……」

「あなたがいても、足手まといになるだけですよ」

「……」


 王妃は、香子たちの方を向いた。


「あなた達には、お手数をかけました。気にせずに全速で城から離れて下さい」

「はい」


 香子はヘリの速度を上げた。


 城はあっという間に小さくなっていく。


 窓の外を見ると、数頭のベジドラゴンが並走して飛んでいた。

 その背中には、同じく城から脱出したナーモ族の民間人が乗っていて、ヘリに向かって手を振っている。

 芽衣も、ベジドラゴンの方へ手を振った。


「あれで、もっと多くの人を、逃がせなかったのでしょうか?」


 芽衣の何気ない呟きに王妃が答える。


「ベジドラゴンの長老が、戦争に巻き込まれるのを恐れて、仲間たちに城へ行く事を禁じたのです」

「では、あのドラゴンさん達は?」

「一部の漢気あるベジドラゴン達が、長老に逆らって駆けつけて来てくれたのです」

「そうだったのですか」

 

 翡翠色に輝く翼竜達は、やがてヘリから離れて行った。


 ヘリはしばらく間、鬱蒼とした森林地帯の上を飛び続けていく。

 やがて、森林が途切れ草原地帯に入ったところで、香子は一度ヘリを着陸させた。

 燃料が無くなったわけではない。

 先ほどの砲撃でやられた箇所の点検をするためだ。

 脚立に登って砲弾のぶつかった個所を見た芽衣は、ため息をつく。


「芽衣ちゃん。治せそう?」


 脚立の下から、声をかける香子に芽衣は首を横にふって答えた。


「ダメです。アンテナが丸ごと無くなっています。プリンターがないと治せません」


 プリンターもカートリッジも、リトル東京へ返すヘリに積んでしまったためここにはなかったのだ。


「そう」


 芽衣は、脚立から降りてきた。


「他の機能は問題ないのですが、母船との通信だけはできません」

「困ったわね」

「幸いなことにP0371のデータだけは、砲撃を受ける直前に母船に送る事が出来ました」

「P0371? なにそれ?」

「すみません。言ってなかったですね。先日、私が作った人工知能(AI)です」

「そんなもの、どうするの?」

「実は、北村さんを再生してほしいとお願いしたときに、電脳空間(サイバースペース)の北村さんは『カルルと戦う事になるのは嫌だ』と言ったのです。だがら、カルルさんと出会う前のデータから再生してはと提案したのですが……」

「それは無理ね。海斗は電脳空間(サイバースペース)で目覚めた時、最初にカルルと会っているの。だから、カルルと会っていないセーブデータは無いのよ」

「いいえ、一つだけあります」

「一つだけ?」

「スキャナーで読み取った直後の生データなら……」

「ダメよ! そんな事をしたら。それで再生されたコピー人間は、二十一世紀の日本から、いきなりこんな惑星に連れてこられたと認識するわよ」

「分かっています。だから、生データから作られた北村さんが困らない様に補佐するための人工知能(AI)を作ったのです」

「それが、P0371とか言うの?」

「はい。香子さんの記憶をベースに作りました。専用のアンドロイドも、電脳空間(サイバースペース)の私が用意しています」


 香子は、しばらく考え込んだ。

 もし、自分が二十一世紀の日本からこんな惑星に放り出されたら、どう思うか?

 きっと、混乱してパニックに陥るに違いない。

 絶望して死にたくなるかも知れない。

 海斗なら、あるいは順応してくれるかもしれない。

 それでも、そうとう苦労するだろうし、勝手な都合で再生した自分を恨むかもしれない。


「やっぱり、海斗の再生は止めさせないと。生データから作るなんて、海斗が可哀そうよ」

「でも……」

「私なら大丈夫だから……」

「でも、通信機が治せないのですよ」

「そうだったあ!」


 香子は頭を抱えた。


「芽衣ちゃん。こうなったら、急いでカルカに行きましょう。《天竜》の人たちに会えれば、プリンターを借りられるかも知れない」

「はい」


 二人はヘリに乗り込み一路カルカを目指したのだった。

Pちゃん「本来アンドロイドとは男性のようなという意味なので、私のような女性タイプはガイノイドといいます。しかしアンドロイドとい呼び方が一般的に広まっているので、私の事はアンドロイドで差し支えありません」

ミール「ややこしいですね。お人形さんで良いじゃないですか」

Pちゃん「人形じゃありません! アンドロイドです!」

ミール「はいはい。でも、アンドロイドとかガイノイドとか、そんな、細かい事を気にする人いるのですか?」

Pちゃん「作者がネットでアンケートを取ったところ約二%の人が気にしていました」

ミール「少な!」

Pちゃん「少ないけど、その中に『女性型はガイノイドって言うんだよ! バーカバーカ』と言ってくる人がいるかもしれないので」

ミール「予防線を張っていたのですね」


※追記

アンドロイドとはギリシア語で「男性」を意味する「andro」を語源としています。

そのために「女性型も男性型もアンドロイドと呼ぶのはおかしい」という意見が出てきた事から、ギリシア語で「女性」を意味する「gynaecoid」から「ガイノイド」という言葉が作られました。

ちなみにそれは八十年代の事で古典SFにはありません。


予防線を張るつもりが余計に傷を広げてしまいました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ