一つだけ優れている事
弾丸を受け止めたのは、キラの分身体だった。
キラは、エラを睨みつけて言う。
「さっき言いそびれた事があるので、言いに来た」
「なんだ?」
「私は帝国に愛想が尽きた。よって、帝国を捨ててリトル東京に亡命する」
「そんな勝手が、許されるとでも思っているのか?」
「元より、許して貰おうなどとは思っていない。私はただ宣言しに来ただけだ」
「ふん。勝手にするがいい。だが、キラ・ガルキナよ。リトル東京が、お前を受け入れてくれると思っているのか?」
「それは分からない。だから、受け入れてもらうために、手土産を用意しようと思う」
「手土産だと?」
キラは、ビシっとエラを指差した。
「その手土産とは、エラ・アレンスキー! お前の首だ!」
それを聞いたエラは笑い出す。
「あはははははは! これは傑作だ。お前ごときが、私に勝てるとでも思っているのか? 十二の分身を操るカ・モ・ミールですら、私に勝てなかった。分身一体を操るのがやっとのお前に何ができる?」
「確かに私は、分身一体を操るのがやっとだ。だが、私には師匠より優れている事が一つだけある」
「なに? なんだ、それは?」
「戦ってみれば分かる。行くぞ」
キラはエラに向かって駆け出した。
「バカめ!」
エラの放ったプラズマボールがキラを包み込む。
だが……
「シャー!」
プラズマボールの中から、キラの分身体が、顔が裂けるほど大きく口を開き、牙をむき出しにして、飛び出してきた。
かつて僕と戦った時と同じ口裂け女状態だ。
「バカな!」
エラはさらにプラズマボールを放つが、キラの分身体にはまったく通じない。
そうか!
ミールの分身は憑代に木札を使っているが、キラの憑代は短剣。
最初の短剣は僕が壊してしまったが、キラがミールに弟子入りしたときに、ロボットスーツのメモリーに残っていた映像を元にして僕がプリンターで作った。
元の材質が分からなかったので、どうせなら強い方がいいと思ってチタニウムにしておいた。
確かにプラズマボールの温度はチタニウムの融点より高いが、Pちゃんの言う通り熱量が少ない。
プラズマボールの一発や二発じゃ破壊できない。
「シャー!」
キラはエラに肉薄し、ついに肩に噛みついた。
「ぎゃああああ! 痛い! やめろ! 離せ! 止めて! 離して!」
こいつ、人を痛めつけるのは好きだが、自分は全然痛みへの耐性がないのだな。
「この!」
エラは拳銃を撃ったが、キラの分身にそんな物が通じないのは僕がよく知っている。
プラズマボールの零距離射撃を続けて、やっとの事でキラの分身を仕留めたが、そのために薬を二つ消費してしまった。
残りは二つ。




