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モニターに応募したら、系外惑星にきてしまった。~どうせ地球には帰れないし、ロボ娘と猫耳魔法少女を連れて、惑星侵略を企む帝国軍と戦います。  作者: 津嶋朋靖
第七章

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「奴は逃げた」

「違う! これは《天竜》じゃない!」

 僕がそう叫んだのは、機能を停止して漂っていた宇宙船の船首付近での事。


 場面はいきなり、タウ・セチ到着まで飛んだ。

 タウ・セチに到着した《イサナ》のレーダーが、惑星を周回する宇宙船の姿を捉えたところから再生が始まったのだ。

 最初は誰も、その船を《天竜》だと思っていた。

 しかし、いくら呼びかけても返事がない。

 とにかく、《イサナ》から調査隊を出すことになった。


 その調査隊に、僕も参加した。

 もちろん、実際に出るのはプローブで、僕らはそれを操作しているわけだが、仮想現実(バーチャルリアリティ)の中では、自分達が生身で宇宙に出ていくように再現されていた。

 そして近づいてみて、その宇宙船は《天竜》ではないと分かった。

 地球の船ではあるが、かなり古い。

 レーザー受光板が見当たらないところを見ると、自前の対消滅エンジンか核融合エンジンだけで、ここまで来たのだろうか? それとも、レーザーでの加速を終えた後、受光板は分解して推進剤に使ったのか?

 そんな事を考えている時に、カルルが手動で開けるエアロックを発見した。

 さっそく、中に入ってみる。

 船の中は真っ暗闇。

 今にも、ゾンビ化した船員が襲ってきそうな雰囲気が漂っている。

 途中にあった電子機器は、すべて壊れていた。

 どうやら、この船は何者かから強力なEMP攻撃を受けたらしい。

「誰かいませんか?」

 香子が英語で話しかけた。

 まったく返事はない。

「鹿取さん、北村さん、ちょっとこれを見て下さい」

 芽衣ちゃんがブリンターの前で僕ら呼んでいた。

「芽衣ちゃん。ブリンターがどうかしたの?」

 僕もブリンターをマジマジと見た。

「少し古いタイプだね。それでも人間を出力はできる。これが何か?」

「あの……ですね。カートリッジの数が変なのです」

「カートリッジ?」

 プリンターの裏についているマテリアルカートリッジ群に目を向けた。

「マテリアルカートリッジが、どうかしたの?」

「普通のプリンターって、マテリアルカートリッジは水素からビスマスまでの八十三じゃないですか。だけどこれは八十四あります」

「一つ多い? ビスマスよりも重い元素のカートリッジがあるかしら?」

 香子はカートリッジを一つ一つ調べていく。

「これは!」

 香子の指差すカートリッジには『Pu』の元素記号。

「プルトニウム!?」

 僕がそう言った途端、芽衣ちゃんの顔が恐怖に歪んだ。

「ひいいぃ! 被曝しちゃうぅ!」

 いや、僕ら実際には、ここにはいないんだから……


 ボン!


 突然、芽衣ちゃんの姿が巫女装束になった。

 アバターだから、こういう事もできるのだが、なんのために……?

「払いたまえ! 清めたまえ! 悪霊退散!」

 芽衣ちゃんは、払い串を必死になって振るっていた。

「あのねえ芽衣ちゃん。いくら悪魔の元素だからって、お祓いでは何とかならないと思うな」

 疲れたような声で香子は言う。

「そうでした! つい、気が動転して……」

 どう動転したらそうなる……そもそも、プルトニウムのプルートはギリシャ神話の冥府の王。日本の神道とは宗教が違うって……

「それにしても、何のためにプルトニウムカートリッジなんて物騒なものを? 核兵器でも作る気だったのかしら?」

「それ以前に、プルトニウムを扱えるプリンターなんて。国際法違反ですぅ!」


 まさか? カルカを滅ぼした核爆弾も、シーバ城の地下に隠されていた核爆弾も、これで作ったのか?


 しかし、Pちゃんの説明では通常のブリンターでプルトニウムやウランなど放射性物質を扱うと、プリンターが壊れるはず……いや、それは技術的に克服可能なのだろう。

 芽衣ちゃんは国際法違反だと言っていた。

 核兵器を製造可能なプリンターを作ること自体が禁止されているのか?


「キャー!」

 突然、悲鳴が聞こえてきた。


 全員が一斉に悲鳴の方へ向かう。

 実際に向かっているのはプローブなのだが、僕たちの目にはそれを操作している人間のアバターの姿が見えていた。

 ちなみにプローブ本来の姿は、球状の本体に二つのマニピュレーターと二本の足がある。

 まあ、無重力状態では、足なんて飾りだけど……

 程なくして、現場に着くと一人の女性隊員が通路にへたり込んでいた。

 あれは、相模原 月菜?

 月菜が僕達に気が付いた。……え?

「北村君!」

 月菜は僕に抱き付いてきた。

 実際はプローブが抱き付いているのだが、壊れないかな?

「怖かったあ!」

「な……何があったの?」

「相模原さん。海斗から離れなさい!」

「何ですか、鹿取さん。幼馴染だからって、大きな顔しないで下さい」

「そっちこそ、元カノのくせに。自分から海斗をフッたくせに……」

「嫌いになって別れたのじゃありません。今でも好きです。でも、あの時の北村君はいつも寂しそうな顔をしていた。そこにいない誰かの事を思っていたのよ。私では彼の心の穴を埋めてあげられなかった」

「安心して。その穴は、今あたしが埋めているから……」


 頭痛い……早送りしてくれ……


『おお! すまん、すまん。早送りしようとしたら、香子が編集作業の様子を見に来たものでな。今出て行ったから、早送りするぞ。ちなみ相模原 月菜が悲鳴を上げたのは死体を見たからなんだ』


 死体?


 狭い密閉された部屋の中にあった死体は、まったく腐っていなかった。

 それだけに余計に不気味だ。

 プローブで入った僕らにはあまり実感はなかったが、船内空気の温度は氷点下。

 微生物もいない、酸素濃度もかなり下がっている。

 腐るはずはない。

 死因は凍死のようだ。

 部屋の中に小さな電気ヒーターがあったが、これもEMP攻撃を受けた時に壊れたようだ。

 部屋の隅には何かが燃えた跡がある。

 死ぬ前に、紙か何かを燃やして暖をとったのだろうか?


「何か、書いてあります」

 

 芽衣ちゃんが指差した先の壁に、何か文字が書いてある。

 何語だろう?

 壁の近くに、一部焦げた木片が落ちていた。

 これで書いたのか?

「おい! 死体だって?」

 カルルが、部屋に入ってきた。

「ああ、ダイイング・メッセージみたいなものがあるのだが……」

 僕の指差した壁の文字に、カルルは目を向けた。

「奴は……逃げた」

 カルルは、呟くように言った。

「え? カルル。読めるのか?」

「ああ。俺の母国語だ。『奴は逃げた』と書いてある」


 奴? 奴って?


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