極楽か? 地獄か?
ピシ! ピシ! ピシ!
床に、亀裂が走った。
「え? いや、これはちょっと……」
それをやってしまったカルルの方、が驚いていた。
床に穴をあけて『どうだ。俺の方がつおいんだぞ!』と、やりたかったのは分かる。
その前に、僕がなんのために床に穴をあけたのか、奴は考えるべきだった。
この下の地下牢にミールがいる。
だから、床が崩壊しないように、慎重に力の配分を考えて穴をあけたのだ。
だが、その時の振動で、床全体がもろくなってしまっていたようだ。
そこへカルルが、最後の一押しをしてしまった。
そのため、僕より大きな穴を空けて力を誇示するだけのつもりが、床全体が崩れてしまい、カルルのロボットスーツは瓦礫ごと下へ落ちてしまった。
「おい、カルル」
返事がない。ピクリとも動かない。
ロボットスーツを着ていれば、このぐらいで気絶するはずは……あ! そういえば、あいつバイザー開いたままだったっけ。
額を瓦礫に打ち付けて気絶したな。
結局こいつ、何しに出てきたんだ?
いや、カルルはどうでもいい! ミールは!?
下を見ると、地下牢は完全に瓦礫に埋もれていた。
地下牢と通路を隔てる壁も少し壊れている。
もし、ここにまだミールがいたら……
「カイトさん!」
通路からミールが駆け込んでくる。
よかった。無事だった。
さらに、その後ろから、戦闘モードになった十二人の分身達が入ってきた。
「どうしたのです? いったいこれは……」
「カルルがバカやって、床を崩してしまったんだよ」
「カルルが? 今どこに?」
「そこに、埋もれている」
ミールは、赤いロボットスーツの近くに歩み寄り、棒切れで恐る恐る突いてみた。
ピクリとも動かない。
ミールは、僕の方を向く。
「カイトさん。今のうちに、トドメを刺しておきますか?」
それも、いいかもしれないが……
こいつも磁性流体装甲で覆われているだろうから、下手な攻撃は通じない。
無防備な顔面は、瓦礫に埋もれているので掘り起こす必要がある。
「下手に刺激して、目を覚ましたら面倒だ。ここは逃げよう」
「はーい。それじゃあ、そっちへ飛びますから受け止めて下さい」
「飛ぶ?」
ミールって飛行能力あったのか?
下を見ていると、四人の分身達が集まって、互いの手を合わせ屈み込んだ。
その合わせた手の上に、ミールが片足をかける。
「では行きます。いっせーのーせ!」
分身達が一斉に立ち上がると同時に、合わせていた手を上げた。
その反動で、ミールが飛び上がってくる。
「カイトさーん!」
穴から飛び出してきたミールを、僕はお姫様抱っこで受け止めた。
途端に、ミールは僕の首に手を回し、顔を近づけてきた。
そういえば、僕もバイザー開いたままだった。
「うぐ!」
唇に、柔らかい感触が伝わってくる。
しばらくして、ミールは唇を放してニッコリ微笑んだ。
「ミール……」
「カイトさん。戻ったら、将来の事を、ゆっくりとお話しましょう」
「う……」
僕は極楽に登ったか? アリ地獄に落ちたのか? どっちだろう?




