来ないね
「ご主人様。赤外線センサー、対人レーダー、レーザートラップ何れも反応ありません」
今、僕らがいる場所は、地下道の出入口から数百メートル離れた森の中。木を切り倒して切り開いた……自然破壊してすんません……広場にいる。広場へ続く道の入り口は、立体映像で隠してある。
広場周辺の森の中には各種センサーを仕掛けてあり、人が通れば分かるはず。
「カルルは、本当にこっちへ来ているのでしょうか?」
Pちゃんは疑わしそうに言うが、奴は僕と同じ時代の人間だ。
帝国人やナーモ族とは違い、二十一世紀地球のテクノロジーを知っている。
それを掻い潜る方法だって……
僕はロボットスーツを装着し、ショットガンを構えて奴を待ち受けた。
しかし……
「来ませんね」
僕の背後で、ショットガンを構えているPちゃんが呟くように言う。
「来ないね」
数分待ったが、まだカルルは現れない。
通信は、まだ繋がるだろうか?
一応通信手段確保のため、奴のドローンはまだ落としていない。
こっちも、二号機は引き上げたが、不時着した一号機を通じて通信はできる。
呼びかけてみた。
「おい、カルル。まだか?」
『慌てるな。今、入り口を見つけたところだ。もうすぐ行くから待っていな』
どうやら、立体映像で隠した入り口を見つけたようだ。
「来るぞ!」
ショットガンを広場の入り口に向けた。
一分経過……
Pちゃんが頭のアンテナをビコピコと動かしている。
「ご主人様、やはり、どのセンサーにも反応がありません」
どんな方法で、センサーを誤魔化しているのだ?
そもそも姿も見えない。
木々の間に隠れているのか?
それとも光学迷彩?
そうだ!
スマホを取り出してアラームを鳴らしてみた。
ピー! ピー! ピー!
カルルに呼びかけてみる。
「おい、カルル」
『なんだ?』
僕はマイクを外してスマホの上に乗せた。
これでマイクを通して、アラーム音がカルルの通信機に送られる。
茂みの中に隠れていても、そこからアラーム音が聞こえれば、そこに奴はいるはずだ。
スマホのそばから離れて耳を澄ます。
どこかから、アラーム音が……さっぱり聞こえてこない。
もう一度マイクを取った。
「おまえ、本当に来ているのか? こっちのセンサーに、まったく反応がないぞ」
『センサー? 何のことだ?』
「何って……こっちの周囲にはレーザートラップや赤外線センサー、監視カメラ、対人レーダーを仕掛けてあるのだが、さっぱり引っかからないぞ」
『いや、そんな物は見当たらないが』
ん? 通信機から奴の足音が聞こえてきた。
カツーン! カツーン! という石段を踏みしめるような乾いた足音だ。
しかし、この広場へ通じる通路は、むき出しの土。
こんな足音するはずがない。
「カルル、全然違うところに来ていないか?」
『そんなはずはない。お前は、ここにいるはずだ』
「本当か? 住所は合っているか?」
『住所? 住所は……んなもんあるかーい!』
そうでした。
「じゃあ聞くけど、どうしてそこに僕がいると分かった?」
『お前、さっきレーザー誘導弾で城を爆撃しただろ』
レーザー誘導?
僕はPちゃんの方を振り向いた。
「Pちゃん。さっき地上攻撃に使ったミサイルはレーザー誘導弾なのか?」
「いいえ、電波誘導弾ですが」
通信機に向かって言う。
「レーザー誘導弾なんか使ってないぞ」
『嘘をつけ。俺は見たぞ。城の見張り塔からレーザーが出ているのを』
え? それって……
『レーザーの照射された先にミサイルが着弾した。それで見張り塔にお前がいるとわかったのさ』
ヤバイ! そっちにはミールがいる。
『待たせて悪かったな。ようやくドアの前に着いたぜ』
「まて! そこに僕はいない!」
『今さら、苦しい嘘はよすんだな。北村海斗』
ドアの開く音が通信機から流れた。
『きゃああああ!』
続いて、ミールの悲鳴が……
いかん! ミールが捕まってしまう!




