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逃げた神々と迎撃魔王 第一部 〜 集う冒険者たち 〜【完結済】  作者: モモル24号
レーナ編

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逃走勝負

 捕えた元銀級冒険者から少し情報が取れた。ベルク商会の襲撃を企んだのは処分された侯爵の御用商人の親族で、帝国の中央貴族と繋がっていたらしい。


 国外に逃げていた彼らも高い報酬と落ちぶれる原因をつくった連中に恨みを晴らすよい機会だと引き受けたみたいね。


 完全に逆恨みだ。なので侯爵は首謀者の一人だったが、元銀級冒険者の事は知らない。


 侯爵側はベルク商会に陰謀があると罪をでっち上げて捉え、ラズク村近辺の探索で失った費用を回収しようとしたようだ。


 めちゃくちゃな上に、帝国の中央貴族と作戦が被った。


 したたかな元銀級冒険者はうまくこれを利用して、彼らがわたし達から奪った財産を奪って逃げるつもりだったようだ。

 ただ、門が開いたことに違和感を感じ逃げる用意をしていた所でわたしに捕まった。


「見逃してはくれないよな」


 言葉巧みに情けなさを醸し出すあたりも年季が入っている。

会話を重ねると、いつの間にか逃してやりそうだ。


 情報をペラペラ喋ったのも、あくまで自分を使い捨ての駒と見せる演出だろう。


 こういう姿ならレガトに見せて勉強にさせたかったかな。

 でも村人たちの会話を聞いてしまったら、あっさり皆殺しにしてたかもしれない。


「そうね、悲しみの精霊と追いかけっこしましょうか」


「はあ?なんだそれは」


「森の魔物のバンシーからヒントを得た魔法よ。触れられると絶望と悲しみに心が擦り切れてゆくわ」


 わたし達が負った悲しみの全てと同じ悲しみを味わってもらおう。

 バンシーの魔力はこの男の生命力から出来ているから他者が退治すれば、この男が死ぬ。


 発狂して狂い死ぬか、生命の源を絶たれ亡くなるかの違いだ。


「お、おまえ頭おかしいだろ!」


「望み通り助かるんだもの。逃げるのは得意なんでしょ?」


 このバンシーを退治するには、絶望の悲しみに打ち克つ強い心を持つか、わたし以上の自分自身の魔力で封じ込めるだけで簡単に退治出来る。


 同じ元銀級冒険者の力比べといきましょうか。


 それでも生命が惜しいのか元銀級冒険者は逃げ出した。

 悲しみの精霊の移動速度は大人が歩く速さなので、馬に乗って走らせれば逃げられる。

 ただ生命力の由来が逃げているものにあるので、あまり離れ過ぎると転移するけどね。


 説明を全部聞く前に元銀級冒険者は行ってしまった。わたしは山小屋と外壁全てを炎で完全に燃やし尽くす。

お父さんが残して隠したものは全て別な場所へ移し、レガトへと受け継がせるつもりだ。

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