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逃げた神々と迎撃魔王 第一部 〜 集う冒険者たち 〜【完結済】  作者: モモル24号
レーナ編

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王国の思惑

 日常生活の不満があるのなら役場や領主へ訴えればいいのに、ラズク村の村人はサンドラさんの宿屋を襲った。


 わたし達が村を追われた時から準備をしていたので、被害は宿屋が燃やされただけで済んだ。


 サンドラさんとヒルテさんは、村人が騒ぎながら松明を持ってやって来るのに気づいて、二階から庭の木へと移り気づかれないよう脱出した。

 元冒険者だけあってサンドラさんは身軽だ。


 宿屋には時折やって来るベルク商会の人間と、領兵隊の人以外に泊まる人がいない。あとは役場の人がたまに飲みにくる程度で今日は来ていない。


 (そそのか)したのが誰なのか特定したかったけれど、サンドラさんは先ずわたしに知らせるために山小屋へ向かった。


「あの様子だと、こっちにも来るね」


 村人の様子を伺ってからヒルテさんもやって来た。

 この人もわたしとさほど変わらない年齢なのに身のこなしが綺麗だ。貴重品はすでにサラスナへ運び、帝国の商会まで送ってある。


「侯爵か、商人か、サラスナも狙われる可能性があるかもしれない。予測は当たるかもな」


 ベルクさんは魔法生物に襲われた日から、サーラズ王国を慎重に調べて回り警戒をしていた。

 レガトの顔を見にやって来た日に狙われたのは、偶然にしては出来すぎだものね。


 村人の不満も誰かが煽っているのはわかるし、今回も用意周到に準備して来ている。死人に口なしとでも思っているのがよくわかる。


「まず間違いなく役場の連中の三人だね」


 役場には交代制で六人の役人がいた。食事や酒を飲みにやって来る中で、目つきのおかしい役人をサンドラさんは調べていたのだ。


「村人に紛れてわからなかったけど、あたしの情報いつも探ってたからね」


 口説くように見せかけて、サンドラさんやわたしの財産を確認していたみたいだ。


 それは村人と違ってわたし達が冒険者と知っているからだろう。

 わたし達の内情を知らない村人は、単純にベルク商会からの財産をもらい受けていると勘違いさせられていた。


 何よりも暴動を起こせば領主がまともなら処罰する。

 報告を受けていないか握り潰されたかだと思っていたけれど、仕掛けた側だと考えられた。

 狼の襲撃後、理由をつけて領兵を引き上げたのも、計画の邪魔になるからだろう。


「ベルク商会はサーラズ王国から撤退するしかないね。サラスナはいい拠点だったろうけどさ」


 ベルク商会がラズク村にこだわった一番の理由はお父さんのためだった。

しかし途中からグローデン山脈の反対側、ラグーンからこちらへ通じるルートを築けないかを探っていたのだ。


 山越えは厳しく強い魔物も多い。

しかしダンジョンや地下道ならと、ラズク村側ではなくラグーンから調査していた。

 

 サーラズ王国からしてみると、商人の抜け道を軍事利用される事を危惧する。

 商人の利と領主としての危機管理の対立でもあり、サーラズ王国のやり方が酷いとしても、全面的に悪いわけではなかった。

 だから情報を仕入れて潰しにかかって来てもおかしくない、というのがベルクさんの考えだった。


 ベルクさんとしてはルートを見つけた場合、帝国と王国に交渉する気だった。ただベルク商会が力をつけるのを快く思わないもの達が、ベルクさんの野望をうまく利用した。


 政治的駆け引きはよくわからない。

あくまでベルク商会の目的は、後付でお父さんがいなくなってからのものだ。


 領主も管理者として危機を持つように意識させられる前は、欲に駆られて失敗した。その腹いせにニルトを巻き込んだのだから、たとえ理があちらにあろうともわたしは許せない。

 そんなわたしの怒りに対して、レガトが手を握って落ち着かせてくれた。


 サンドラさんとヒルテさんは、先に材木置き場へ向かった。

 そこに隠れ家が築かれていて、船も用意されている。


 わたしとレガトは山小屋のまわりに罠を仕掛けて回る。

 近づけば山小屋に炎が発現する。

村人達に荒らされるくらいなら、お父さんやレガトとの大切な思い出でも、全て燃やそうと二人で決めたのだ。





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