ラズク村へ帰還
サーラズ王国のラズク村にいるサンドラさんの元へ戻って来たのは、冒険者として旅立ってから三年が過ぎた頃だ。
ラズク村では領兵隊の人数が増えていたため、サンドラさんの宿屋は宿としてより食事やお酒が楽しめる店として賑わっていた。
いまだにダンジョンが発見出来ず領主のサーロンド侯爵は苛立っていたようだけど、信用していた銀級冒険者の失態と、報復を恐れて逃亡したために、冒険者達が尻込みして中々成果が出ない現状だった。
領兵隊を増やしたのは周辺を探索させる為なのだろう。冒険者と違い探索に不慣れな兵士達では結果が明らかだった。
三年ぶりに戻って来たわたしをサンドラさんがギュッと抱きしめた。
宿屋にはベルク商会の紹介で、わたしくらいのヒルテさんという子が働いていた。
「あたしも歳だからね。紹介するよ、わたしの娘のレーナだ」
自慢気にサンドラさんがわたしを見ていう。わたしにとってサンドラさんがお母さんなのは間違いない。
何度も話しを聞いていたのか、ヒルテさんという娘は動じなかった。
サンドラさんは歳だというけれど、実際の年齢よりかなり若いと思う。
何より綺麗で領兵隊の人達からプロポーズが絶えないらしい。
「それで、どうして戻って来たんだい?」
サンドラさんは訝しげにわたし達を見る。サーラズ王国はダンジョンがあまりなく、冒険者の仕事は隊商の護衛や雑務が多い。
ラズク村も僻地のため『鋼鉄の誓い』が行っていたように、商会絡みの仕事がなければ用のない土地だった。




