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逃げた神々と迎撃魔王 第一部 〜 集う冒険者たち 〜【完結済】  作者: モモル24号
レーナ編

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牛魔人の王

 深層とまた雰囲気が変わった深淵と呼ばれる領域まで到達した。


 大洞窟とも言える通路だけに、足元は所々凹んでいる。飛来するディープウルバットの群れに気を向け過ぎると、足を取られるので注意をしないといけない。


「帝国のダンジョンで深淵部が発見されたと聞いたが‥ここもそうみたいだな」


 終わりのない迷宮と呼ばれるダンジョンはいくつもの区域がある。わたしもいろいろと調べて知った。

 深淵をもって最深部とする研究者もいて、その目で確かめた事のない学者の戯言と一蹴される理由が、深淵部に降り立ってなお、広大なダンジョンの広さにある。


「ここまで来て、さらに広くなるのか」


 広くなる、それは強力で厄介な敵が群れを成す事を意味する。


「ほら、言ったそばから来やがった」


 ベッタが嘆く。貴方の言葉を聞きつけてやって来たのよ。一つ目竜と、ダークネスヒドラが揃ってやって来る。それも二匹ずつの四匹も。


 手数が足りずわたし達は後退をする。深淵の入口付近は狭いため個別撃破出来たが、これではこの先が思いやられる。

 おそらく、巨大な空間だってあるだろうし、魔物の数も最大数はわからない。


「食料には余裕あるが、どうする?」


 ニルトも流石に決めかねたようだった。


「ディープウルバットだけじゃ信用されないから、別の深淵域の魔物を倒すしかないね」


 わたしはどこまで深淵部が続くかわからないので、攻略は一旦諦める方が賢明だと思った。

 出来れば見た事がない魔物やお宝があればいいのだけれど。


「『異界の勇者』の記録は越えたわけだから、無理はしない方がいいかもね」


 最悪いま倒した魔物だけでもわかってもらえると思う。


「この階層だけでも探って、先がどうなるか確認だけするか、だな」


 ニルトは魔物より次につながる探索を優先する。

 下へとさらに続くかどうか調べておく。魔物は出来れば倒して素材を回収して帰ろう、となった。


 余力はあるのに、精神的には流石に疲れたみたい。

 深淵部に来た事で攻略達成は出来なかったけれども、新しい発見は出来た。

 わたしの魔法が仲間達を、銀級冒険者に匹敵する能力に引き上げる加護を与えてくれる事もわかった。


 何より気力は衰えてきたけれど、いまだに魔力の底が見えていない。

 わたし自身が底を感じないだけなのか、そこら辺がいまいち摑めないのよね。


 探索をしていると激しい雄叫びが聞こえた。

 タウロスキングより一段と大きく倍はありそうな身体のミノスレックスがタウロスキングとタウロスデーモンを引き連れ襲いかかってきた。


「ベッタとナークは右、ニルトとアリルは左に。急いで!」


 タウロスの集団突撃は禍々しい輝きを放つ。巻き込まれたら何か危険な気がしたのでパーティーを散開させた。


「俺達が周りを削る」


 わたしの意図を察してニルトがミノスレックスから配下を散らす。


 わたしはミノスレックスに雷火の魔法を発生させる。驚いたミノスレックスが炎を消そうと転がる。

 自分の魔力を媒介にしてるのに気づいたのか、魔法が消された。


 お返しとばかり、手に持つ巨大な戦斧を振るう。ミノスレックスの怪力と魔法の力が合わさり、わたしはかわす事は出来たけど、振動と風圧でよろめく。


 隙を逃さない、とばかりにミノスレックスが突進してくる。禍々しい輝きは魔物の身体を硬化させて、物理的な攻撃を弾くようだった。


 わたしは風圧を利用して飛ぶ。ミノスレックスの肩に着地すると、わたし自身の炎でミノスレックスの頭を包む。


 熱さと呼吸を奪われ暴れまわる。まとわり続ける炎は今度は消えない。消す事を諦めたミノスレックスはわたしを捕まえようとしたが、捕まる前に背後へ飛び、超加速の岩弾の嵐をぶつけた。


 岩弾の嵐は炎を巻き込みミノスレックスを封じ、ようやく倒した。


 ニルト達も魔物を倒し切る。思わぬ難敵だったけれど、前回の教訓を活かすことが出来た。

※ 2023年8月30日、サブタイトルを【牛王の王】から【牛魔人の王】に変えました。

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