ガウツの秘密
ラグーンのギルドに戻ると副ギルドマスターのクォラさんとギルドマスターのラクトさん、つまりラグベクト辺境伯様が待ってた。
ギルドの食堂にいた女将のエルヴァさんがわたしの事が気になって調べたらしい。
「まったく、冒険者のチェックはあれ程怠るなと言ったじゃないか」
呆れた面持ちで、エルヴァさんが言う。
「だって、しょうがないじゃないか。
日に日に増える冒険者を相手にする受付も手が足りてないんだから」
疲れた顔の副ギルドマスターのクォラが愚痴をこぼす。
ロドスもそうだった気がする。
やたらに人が多いのも、帝国のギルド内で『海竜の咆哮』の人気と名声は今だに高く、伝説にあやかろうとする冒険者が絶えないからだ。
「十年近く前の事なのに、いまだに目立った偉業が達成されていない事が問題だろうな。その点ガウツは最後まで凄い男だった」
グリズリーディノスの件を思い出したのかラクトさんが興奮しだしたため、エルヴァにさん拳骨を落とされていた。
その方ギルマスで領主様なのに、いいのか? ってわたしと仲間達は思った。
たぶん、お父さんの事で気をつかってくれたのだろう。
「気にしないでください。それにお父さんの事をもっと知りたいんです」
わたしの言葉に元『海竜の咆哮』の五人が顔を見合わせる。
「ガウツについて一緒にいたメンバーが知るのは、都市国家群のキールスという街からだ」
「聞いた事のない鋼級の冒険者。
それに見た事がない鎧を着ていてクロードが騒いでたな」
思い出せるのはキールスの街で、鋼級の割に一人で、妙に不慣れな感じで依頼をこなしていた事だ。
仲間を失った冒険者が挙動が怪しかったり、事務作業を任せっきりで解散したりした後にそういう状態になる者はいる。
お父さんの場合は後者に近かったようね。
「メンバーの誰よりも年上で、冒険者業は素人臭いのに、誰も知らない事を知っていたように思う」
お父さんはまるでポンっと現れた人みたいだった。
「『異界の勇者』やら何やらと同じだったりして。」
わたしはその言葉になんとなく引っかかりを感じた。
お父さんの話しはまた後で資料を含めて教えたもらう事になった。
わたしは次の目標はお父さんについて調べようと決めた。




