制限時間
レーナとガウツそれぞれの心情。
わたし、レーナは十二歳になった。
ガウツと出会ったばかりの頃に比べて、心がだいぶ安定して落ち着くようになった。
いつも近くで見守ってくれるガウツを、わたしは『お父さん』と呼んでいる。恥ずかしいから心の中でだけど。
それを認めるのは悔しいけれど、ちょっかいばかりかけてからかってくるニルトのおかげで毎日が楽しい。
わたしをお嫁さんにするんだって、言い続けてずいぶん経った。
ガウツは呆れ半分、面白半分に見てる。娘がもらわれて言ってもいいの? と思う。
ただニルトといるのは幸せだよ。昔の嫌な思い出がなくなったのは、楽しい思い出であふれさせてくれたからだ。
最近はラズク村にも人が集まり、山の調査が、本格的に始まった。
ニルト達も調査隊に加わる事もあり、護衛の仕事もあるので忙しい。
ガウツはわかったという風にわたしの頭を撫でてくれるけど、構ってやってるのは、わたしの方なんだよ?
久しぶりに会うとじゃれてくるのはニルト方で、わたしは仕方なく付き合ってあげてるだけなんだから。
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レーナの恋する乙女の仕草を見て、俺はかつて手に入れられなかったものを手にした実感があった。
ずっといてやることが出来ないのが、もどかしい。
俺は幸せを噛みしめる娘に、残酷な選択を突きつけなければならない。
ニルトという男が現れたというのに、今更俺が役割りを果たす必要があるのか、この所ずっとそればかり考えていた。
身体がうまく動かない。
俺が姿をなくした後で、ベルク氏なりレミールがレーナに伝えてくれる。
刻限がせまっている。久しぶりに女神様の夢を見た。ずっと昔、こちらに来たばかりの頃はよく見ていたのに。
俺は最後の時が来るのを静かに待ち続けた。




