ガウツの願い
ガウツはレーナには、自由に行動していいと伝えている。危ないから目の届く範囲にはいるようにしていたが、行き先を伝えていれば問題はない。
ガウツも基本的には注意している。たまに迷いこむ魔物や獣がいるから心配になるだけである。いまのレーナならゴブリン程度は、戦って勝てると思っていてもだ。
もっと子供らしく遊ばせたい所だけれど、ラズク村は他に子供がいない。
レーナの友達になれそうな子は、サラスナの町まで行く必要があった。
結局ガウツかサンドラ達大人が彼女の相手になる。ニルト達パーティーの登場は、ガウツとしてはありがたい話しだった。
特にニルトとアリルはレーナを構いたがった。レーナの邪魔はしないけれども、仕事を手伝ったり、狩猟を教わったり、獲物の捌きかたを真似したりと、彼らが暇な日は何をするにもレーナといた。
レーナはと言うとはじめの頃は凄く迷惑な、嫌そうな表情をしていた。
レーナに心境の変化があったのは、八歳の頃だ。この頃になるとレーナは一人で狩りに行き、弓を使って獲物をしとめていた。
相変わらずニルト達がやって来て、獲物を見てはしゃいでいる。 レーナは呆れ顔だが、どことなく嬉しそうに頬を染めていた。
娘を嫁にやる心理がガウツにもわかる気がしたが、ニルトならあとを任せても良いと思った。
だからガウツはニルトを呼び出し、自分が亡くなったらレーナの事を頼むと伝えておいた。出来ればこんな山奥に引っ込まずに、広い世界に出て欲しいと願いながら。
ニルトは約束した。
彼は彼で気難しいガウツが、ニルトとレーナの仲を簡単に認めるとは思いもしなかったようだ。
そしてニルトはガウツの時間があまりないのでは? と気づいたのだ。




