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逃げた神々と迎撃魔王 第一部 〜 集う冒険者たち 〜【完結済】  作者: モモル24号
レーナ編

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火種の予感

 わたしが五歳になる頃、ラズク村に変化が起きた。何もない寒村だったのに、他国に基盤を持つベルク商会が頻繁にやって来るようになったからだ。

 取引の儲けもろくにないまま帰ってゆく事や、村の規模や状況に合わない立派な宿屋を作った事が当然ながら領主の耳にも入った。


 調査の為に領兵隊がやって来た。村人の話しからでは理由がさっぱりわからず、ベルク商会も商売だからと返答し、要領を得なかった。


 現地を調べても何もなかったので、領主はベルク商会の背後関係ついて調査を進める。帝国の公爵領のギルドと親密な関係にある事が調べでわかった。

 反乱とか陰謀を企んでいると家臣が唱えたが、領主は商会が何か企んでいるのは間違いないないが、それは利益に絡む事と考えていた。


 お隣の帝国の新たな辺境伯の誕生の話しは、領主も冒険者ギルドの調査を通じ聞いていた。

 ベルク商会は同じグローデン山脈の王国側にもダンジョンがあると当たりをつけ、ラズク村のような寂れた寒村に肩入れしていると推測したのだ。


 深読みもいい所だったが、魔境とも言えるグローデン山脈のこちら側にダンジョンがないとは限らない。

 ダンジョンがなくとも、鉱脈の一つでも見つけたなら、領土の収益は上がり出世のチャンスにつながる。


 強欲な領主はラズク村の役場を改装し、領兵の宿舎を併設させる。

 また王国の冒険者ギルドと商業ギルドから職員を送り、ギルドの支部を築き、ベルク商会の動向を監視させた。


 ラズク村の村人達は、何もないこの村に次々と人がやって来るようになり戸惑うばかりだった。

 領主のサーロンド侯爵は、今まで領内の僻地は僻地としてずっと放置していたからだ。


 税を収める程の収益がない村なのだ。形ばかりある役場にだって半年に一度、村の様子を見に来るくらいしか役人も滞在してなかった。


 宿屋が出来てからは、冒険者達も行商人とやって来るようになり、何人かは村に滞在するようになった。


 村人達はガウツがいるおかげで、村に支援が届くのを知らない。

 冒険者達は副リーダー以外は若くお人よしで、依頼にかけなくても村の雑務を手伝ってくれた。


 たとえ小さな村でも、冒険者に頼むなら依頼になるし、依頼にしなくとも気持ちでいいから報酬を払うものだ。

 しかしラズク村の村人達は、貧困を理由に税金も免除されているからと、大抵の用事をただで手伝わせていた。


 村の変革と、漂いはじめるわずかな不穏な空気に、今はまだ誰も気づくものはいなかった。

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