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逃げた神々と迎撃魔王 第一部 〜 集う冒険者たち 〜【完結済】  作者: モモル24号
レーナ編

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泣けない子供

途中レーナの視点、心情が入ってます。

 川辺で静かに佇む子供は、俺に気づいた。俺が怖いのか、警戒をしているのか、ジッとしゃがみ込んだままだ。

 着ている服は比較的良い仕立ての生地で、貴族の子供か? と思った。


 年齢は三歳から五歳くらいだろう。

 髪の毛は癖っ毛気味で、目鼻立ちが整っていて、愛くるしい女の子だ。迷子かもしれないので放っておくわけにはいかないよな。俺はおそるおそる声をかけた。


「お父さんかお母さんは、一緒にいないのか?」


 我ながらぶっきら棒にならないように、なるべく優しく話しかけた。女の子はうなずく。迷子、ではないようだ。


「町の子か?」


 幼いが、会話を理解しているようなので聞いてみる。

 女の子は首を振る。


「俺はガウツだ。君は?」


「レーナ」


 なんというか、はじめて答えられる質問にホッとした顔だ。

 自分が理解していない事には答えられないと、わかっているようで、そういう聡いものの顔だよな。


「ここは夜は冷える。町まで歩けるか?」


 俺は一旦サラスナの町に戻り、ベルク商会を頼る。今日は帰るとさっさと出て来てしまったため、少し恥ずかしい。


 レーナは警戒を解いて俺の後について来た。物凄く利発な子供だと感心してしまった。


■□■□■□■□■□■□■□■□■


 わたしは見知らぬおじさんが話しかけて来たので驚いた。

 自分を船に乗せて来たおじさんはわたしを降ろすと、同じその船で帰ってしまった。


 わたしは父親からも母親からも恐がられていたのを知っている。それまでは賢い子だ、可愛い子だと撫でてくれたのに。


 船で帰ってしまったおじさんは召使いとか使用人と呼ばれていた。

 父親と母親に頼まれて、わたしを知らない所へ捨ててくるように言われていた。


 なんでそうなったのか、わたしは自分の手を見る。時々浮かぶ模様を父親が見て、しばらくしたある日突然恐がられるようになった。


 なにか嘆き悲しんでいた。わたしは自分がいらない子になったことを悟った。

 悲しくなって泣こうとしたのに泣けなくてボーっとしていた時に、ガウツと言う名のおじさんと目があった。


 おじさんもわたしを見て恐がっていたの、に優しく話しかけてきた。膝が震えているのに、わたしを怖がらせないようにしている。


 おじさんは町に戻るというので、ついて行く事にした。


□■□■□■□■□■□■□■□■□


「サンドラとの娘かと思ったよ」


 照れながら戻って来た俺に、レミールが笑って、冗談混じりに屋敷へ入れてくれた。

 事情を説明すると、気にしないでいいと言うので頼ることにする。


「行くあてないならウチで預かるよ?

ウチの子より少し上って所かな」


 それは助かる。商会のツテで捜せば身元がわかるかもしれない。

 俺が頼む··と言いかけるとレーナが俺の後ろに隠れ首を振った。 


「懐かれたようだね。ガウツのおじさんといたいのかい?」


 レミールの問いかけにレーナはうなずく。

 俺は唖然とした。

 女の子にモテた事はないが、これは違う。もう余生残り少ないと言うのにいまさら子供の面倒などみれない。


「わたしは捨てられたの」


 レーナの発言に、俺もレミールも固まる。悲しいのに賢さが邪魔して泣けない子供。

 レミールが思わずギュッと抱きしめる。


「今夜は遅いからウチに泊まっていきなさい。」


 泣けない女の子のかわりに、レミールが涙を流す。

 冒険者として商人として、俺もレミールも親のいない子供なんて散々見て来たのに、何故か一番悲しい子供に思えたのだ。

 俺の人生の最後の瞬間は、この子を悲しませ涙を流す事を教える事になった。

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