新たな地へ
インベンクド帝国はムーリア大陸南方地域を治めている。
帝国中央にある帝都インベキアの歴史は古く、百万を越える人口の大都市となっている。
帝都民の食糧事情は、北西にあるグローデン山脈から流れるインディス川と、豊かな実りをもたらすフィールド型ダンジョン『黄金の郷』と『神恵の広場』によるもの。
そして人々が集まるのは『竜王の爪跡』と『堅牢の扉』のおかげだ。
古くから存在しているダンジョンは帝国の発祥の要因にもなっていて、『竜王の爪跡』などは未だ攻略達成に至っていない。
浅層域だけで70層を越え、中層以降は広大な上にランダムに地形が変わる過酷なダンジョンだ。
攻略に集まる冒険者達により街が築かれ、ギルドが出来て都市となり国になる。過程は都市国家群と同じだ。
近隣の探索が進み、食料庫、パントリー型ダンジョンとも言われるフィールドタイプのダンジョンの発見で帝国は大陸有数の国家に発展していった。
『海竜の咆哮』はこのインベンクド帝国でギルドを設立することになった。
帝国の北西グローデン山脈の麓のラグーン地方と呼ばれる地だ。
グローデン山脈は龍の住処とも呼ばれる辺境の地だが、そこから流れるインディス川をはじめ、帝国を支える三つの大河の源になっていた。
この地にギルドを設立するのはラング、ラクト兄弟の父親のロズベクト公爵の依頼だった。
愛人の子供であるラングと、第二夫人五男のラクトには領地も爵位も大したものは残せない。
辺境の地の魔物の活発化からダンジョンがある可能性を感じて、二人の子に自ら切り拓くよう命じたのだ。
支援は出来る限り行うつもりだったが、二人は冒険者となり、帝国ではなく他所の地で名をあげ戻って来た。
『海竜の咆哮』がラグーンの地にギルドをつくり、街づくりを行った。
ギルドの冒険者達により、グローデン山脈に新たな鉱山型ダンジョンを発見する事になる。
皇帝は功績を称え、ラクトをラクベクト辺境伯に任命した。
ラクトはラグーンを領都とし、街の開発と発展に注力した。
力だけはある俺は、ラグーンの開発に力を貸すことにした。
森を切り開き、整地を行い、城壁の岩を運ぶのに、この力が役に立った。
クランに在籍していたメンバーはラグーンギルドに残るものもいれば、店を構えて別の形でギルドを支えるものなどにわかれた。
『海竜の咆哮』の最終目標は帝国にギルドを設立して、未制覇の四大ダンジョンを攻略する事だったが、クランはラグーンギルド設立時に解散していた。
ラングはラクトが辺境伯となった時に、ロズベクト公爵に頼まれて、公都ロドスのギルドマスターになった。
クランの盟主としての偉業と、人材育成、外交手腕を買われた形だ。
仲間達の新たな門出を見送った後、俺はラグーンの地を去ったのだった。




