表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃げた神々と迎撃魔王 第一部 〜 集う冒険者たち 〜【完結済】  作者: モモル24号
おまけの番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

353/356

薬屋の少女 ②

 私は【海竜の咆哮】のパーティーにというよりクランに加わった形を取った。スカウトに来たガウツ達には申し訳ないけれど、お言葉に甘えさせてもらう。ガウツはラング達より年上なのに、リーダーになりたがらない変わった冒険者だ。

 サンドラとよく一緒にいるので、私の両親のような冒険者夫婦かと思っていたら違った。もの凄い勢いで否定するので、サンドラが傷付いていたよ。


 フォルンにある薬屋は戸締まりをしっかりして、鍵を冒険者ギルドへと預けた。管理維持費用は、ガウツ達のクランで三十年分も払ってくれた。その頃には私も冒険者を引退していると思う。たまたまやって来たのに、私のような小娘へ凄く配慮してくれるのが嬉しく思う。


 キールスは、私の両親が参加していた冒険者ギルドの主力パーティーのいた街だ。フォルンを凌ぐ勢いだったのに、行方不明となって二年ですっかり落ちぶれてしまったそうだ。ガウツ達の案内でキールスのクランハウスに行く。そこでスカウトを受けた他の新人と一緒に手続きを行い、新たな仲間達に歓迎される。


「中々良い人材が揃ってるじゃないか」


 【海竜の咆哮】の盟主ラングが自己紹介をして、クランへの加入手続きを自ら行ってくれた。他の二人は【海竜の爪】のパーティーに入ったが、私はクランには参加したものの商業ギルド内の薬師部門にも登録し、特別な立ち位置になった。

 クランの会議を開き、所属する三つのパーティーのリーダー、副リーダーに意見を問う場にも参加を促される。役割上は薬師ギルドのメンバーとしての参加だ。小娘の分際で、と自分でも思った。


 私は戦闘に出る必要はないのだけど、私自身の意思でダンジョン攻略には参加となった。治癒師も見習い治癒師もこのクランにはいるので、即効性の弱い薬師は出番がないかもしれない。でも荷物持ちも大事だとガウツは言った。それに薬は攻略に必ず必要な時が来る。

 両親が志半ばで無念に散ったであろうダンジョンを攻略する事で、私は仇を討ちたかったのだと思う。


 ダンジョンに向かうにあたり、サンドラが槍の使い方を教えてくれた。荷物持ちは戦闘中は荷物番になる。自衛にあたり盾を持つ考えもあったけれど、私は槍を選んだ。気概は一端の冒険者だ。サンドラがやれやれと呆れながらも、真剣に稽古に付き合ってくれた。


【海竜の咆哮】は偉業を打ち立てる事に成功した。【黒魔の瞳】の攻略は、この辺りの冒険者ギルドの悲願でもあった。

 冒険者達は、名誉や偉業を求めるタイプと食べて行くための生業に就くものといる。みんながみんな好奇心に溢れ、危険に飛び込みたいわけではない。冒険者の数に対して攻略が進まないのは、そういう事情もある。

 私もどちらかと言えば、偉業を成すより素材を確実に得たいタイプだ。


 でもガウツの誘いに乗って、ダンジョン攻略を成し遂げた時に、始めて冒険者とはこれを求めていたのかと、知ることが出来た。何度も死に目には合ってる。きっと両親はこいつらに殺されたんだと思うけど、私一人では手の届かない相手だった。


 偉業と共に私は得難い経験と、両親の供養を果たすことが出来た。冒険者として活躍したわけじゃないけれど、攻略メンバーの一員として名前を連ねることが出来ただけで、今後大きな財産となるはずだ。


 重ね重ね、ガウツやサンドラには感謝する。フォルンの街へスカウトに行こうと考えてくれなければ、今頃は燻ったままだっただろうから。



 こうして私は薬師として【海竜の咆哮】のレベルの高さを身を持って知った一人になった。このクランに籍を置いているだけで、足が遠のいた冒険者達が集まって来る。お店を再開すれば、小娘と侮られることはなくなり、薬屋としてやっていける。


 ただ私はクランの一員としてまだ残る事を選ぶ。ダンジョン攻略は成したけれど、仲間達にはまだ、いっぱい借りがあると思えたからに他ならない。だから今まで通りパーティーには参加するし、ギルドを設立した後も薬師ギルドの一員として協力を約束した。



 【海竜の咆哮】は、名声を高め次なるダンジョンの攻略に挑み続けた。その中でもカローデンは私の中で優しい思い出が残っている街の一つだ。


 私はガウツとサンドラの二人と一緒に、薬屋へ仕入れに回っていた。私は道具さえあれば調合は出来る。でも新しい街へ来ると、どんな店があるのか気になるし、どういう薬を用意して置いているかで、街の人の傾向がわかる。

 だから他所の街へ来ると、ついつい調べて回るのが習慣になっていた。

 これは両親の残したお店の再興というよりも、自分の店を持つ時の参考にしたい気持ちがあるからだ。


 ガウツとサンドラは用心棒がてらついて来てくれた。薬は高いものだってあるからと、照れ臭そうにガウツが言う。サンドラが笑うと、ガウツが恥ずかしいのか真っ赤になっていた。


 カローデンの街はダンジョンが多いから、お店の数が多くて見たことのない素材が普通に店に並んでいる。


「ニーシャの薬には、いつも助かってるからね」


 サンドラはニーシャの槍の先生でもあり、こうしてお母さんのように気をかけてくれる。早くガウツが彼女の気持ちに気づくといいね。私は不器用な二人を見て幸せになって欲しいと心から願った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バナー用
 推理ジャンルも投稿しています。応援よろしくお願いいたします。↓  料理に込められたメッセージとは
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ