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逃げた神々と迎撃魔王 第一部 〜 集う冒険者たち 〜【完結済】  作者: モモル24号
おまけの番外編

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薬屋の少女 ①

 私は薬屋のニーシャという少女だ。世間的にはまだ幼い、可愛らしい子と言われる年齢だ。自分で可愛いと言うのはどうかと思う。回顧録なので、まあ許して欲しい。


 新薬を作るんだと、小遣い稼ぎがてら冒険者登録を行ってもらったのは、六歳の頃だったと思う。フォルンの街近くの森で薬草採集しては家に持って帰って来て薬を作る。道具は両親の作業場にある。

 両親が薬を作る姿をずっと見て来たので、私は作る薬によって使う素材の種類が違うことや、分量が変わることは知っていた。何をどれだけ使ったのか投入した量や手順を細かくメモに残す。作った物は私専用の小さな棚にしまう事になっていた。


 誤用を避ける為と、私自身が将来薬師になった時に、顧客に合わせて調合する時に便利だから覚えておきなさいと言われた。薬草を集める時も葉や花や種、茎や根などの部位による違い、若木と老木との差、産地や気候など環境の違いで同じ素材、同じ配合、同じ手順でも違いが出る。


 長寿のエルフ族など、そうした細々とした違いについて研究している人もいるそうだ。残念ながらフォルンの街では、冒険者が多く薬の需要が高いので、研究よりも安定した供給が求められる。私の両親も冒険者稼業をしながら素材を集め、売れ筋の傷薬や解毒薬を中心に作る薬師になっていた。

 だから私が研究熱心なのを見て、本格的に勉強出来る環境作りをしようと協力してくれた。


 そんな心優しい両親だったけれど、キールスの冒険者パーティーと合同の探索から戻らない日々が続いた。【黒魔の瞳】 の攻略を目指して三パーティー、ポーターを入れて二十名が還らぬ人となった。私は当時十歳になったばかり。

 小さなお店と薬、僅かばかりの蓄えに家族の寝床はあった。あくまで行方不明という事もあって、悲しむよりも両親が帰って来たのにお店がなくなってしまっていたとなったら大変だ、私は泣くよりも両親がいつか戻ると信じてお店を続けた。


 私は両親の残した薬屋を継いで頑張っていたが、一年もすると貴重な薬草や素材もなくなる。両親の作る薬を買っていた顧客も幼い娘が頑張っているからと、最初は応援してくれた。しかし一人、また一人と足が遠のいていき、客足は次第に絶えていった。

 収益がなければ資金繰りが苦しくなる。


 私は両親の店を守ることが出来ず、涙ながら畳む事になった。フォルンの街は冒険者の街の一つで、土地に関しての税金がないに等しいのは助かった。都市国家群の大半の街は最初の登録料さえ払えば、国となるまで税金の類は街へ滞在の登録料だけで済む。


 薬屋がやっていけなくなったのは、高級素材を手に入れる資金が入らなくなったためで、安い傷薬ならまだ需要はあった。だけど私は冒険者として自分で素材を集め、薬師としての信頼を高めようと決心した。いつか薬屋を再興するにも、もっと世に出て勉強する必要性を感じていたのもあった。


 二年が過ぎ、私は十二歳になる。もう両親は亡くなった事を受け入れている。フォルンに限らず、お腹を空かせた子供を残したまま冒険者が還らぬ人となるなんて、巷にはよくある話しだ。


 悲しいけれど厳しい現実が私にも訪れただけ。店があり、寝床があるだけ恵まれていると思う。だから私は冒険者となる。薬師として腕を磨き、私のように悲しむ子供達を増やさないためにも良く効く薬を作りたいと思ったからだ。


 そんな時に、フォルンの冒険者ギルドから紹介されたという人達がパーティーメンバーのスカウトにやって来た。腕っぷしの強いものや魔法が扱えるものならともかく、幼い薬師見習いの私に?


 紹介状は本物で、この人達はギルドに大金を払ってまで私の情報を買い、紹介状まで購入したことになる。

 いつか薬屋を再興したいという私には都合が良かった。何せ私は冒険者としては幼く、強くない。パーティーに加えてもらうにも、この辺りの街の冒険者の目指すのはダンジョンばかりだ。【海竜の咆哮】という新鋭クランも、目的はダンジョン攻略だった。はっきり言って私など足手まといにしかならない。


「最初は荷物持ちと、薬を用意したり、食事の支度をしたり雑務だけでもいいのさ」


 凄く綺麗な女冒険者のサンドラさんがそう言って、私の不安に答えてくれた。出来るだけ自衛はしてもらうけれど、基本的にはクランに入り支援役になるのも構わないらしい。


 これはスカウトはスカウトでも、将来を見据えた人材確保だった。【海竜の咆哮】はクランのリーダーのラングがギルド設立を視野に動いていた。

 そのため、私のような冒険者と言うよりも薬師、商業ギルドや薬師ギルドに籍を置く事になる人物も欲していた。


「クランに加入の形でいい。作戦行動時は俺たちのパーティーメンバーとして参加という形を取ってもらうだろうが、遠征に行く行かないの判断は任せる」


 優しい言い方で、ガウツという男冒険者が説明を加えた。パーティーに入れてもらえず、その日暮らしの収入を得るのが精一杯の私には願ったり叶ったりの条件だった。

 本編は完結済みです。


 おまけの番外編、第八章 薬屋の少女編は五話投稿予定です。


 バアルト編は······もう少し掛かりそうです。


 

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