不死者殺しへの道 ⑪
ロドスの冒険者ギルドで、レーナとレガトに偶然再会出来て、私は涙を流して泣いてしまった。
あれから八年も経っていたし、赤児のレガトが、こんなにも兄にそっくりになってるなんて思わなかったから。
サーラズ王国で生命の危険にさらされ帝国まで逃れて来たという。私が冒険者の仕事を教えている三人の女の子達が絡んでいたので、すぐに見つけられて良かった。
気づかなければ、すれ違ったまま、ロズク村まで行く所へだったもの。
レーナとレガトには、この八年で起きた事件や、金級冒険者に至った話し、それに『異界の勇者』達について話しておいた。
彼らの能力と、話しぶりからガウツさんも異界から呼ばれた可能性が高いことも。
勇者達に殺されレーナの魔法の力がなければ、ここにいなかった事を告げると、レーナが物凄くキレて以前にも増して強化された。
分不相応な力を外してもらいたかったのに、逆に私は殆ど死ねない身体になってしまった。
もう腕環などは不死の腕環と言うべき装備で、傷を修復する際に血液まで再生するそうだ。
ヒルテさんの種族には、不死者並の蘇生力を持つものがいるそうね。でも、ここまで強力ではないそうだ。
この力は私ではなくて、レーナに由来する魔力なので、枯渇して使えなくなることはなさそうだった。どうなってるのよ、この娘の魔力は。
積もる話しと思い出に浸ったあとで、私とレーナはロドスの未攻略ダンジョンの『不浄の闇』に二人だけで挑むことになった。
レガト達はその間に、ラグーンへ行き冒険者生活を楽しむのだとか。
母も母だけど、レガトも変わった子供だ。レーナに似たからか、兄よりも男前になりそうだわ。
魔力もとんでもないのがわかる。ただ、その力を上手く扱えるようになるために簡単な魔法しか使えないようにしているみたい。
単純に魔力をぶつけ合うのならレガトが強い。でも、レーナは発想と精度が段違いなのよね。
レガトとヒルテさんも、私のように、不死の腕環を装着させられていた。お仲間さんが増えて安心してしまった。
二人っきりのダンジョン攻略。ハッキリ言って私のやる事は少ない。レーナにはもう私と二人だけの時は、力を隠さないと宣言されていた。
私の強化は『異界の勇者』一人相手取るなら勝てるくらいの強さ。それでも金級になれたくらい強いのに、さらに強化され慌てた。
でもレーナからすると、大した力ではないのが良くわかった。化物だ。
不死者の魔物達なんてどうでもいい。レーナの存在が逃げ出したいくらい恐いと思うのに、兄の顔が浮かんで離れない。
ニルト兄さんは、気づいていながらレーナを抱きしめた。我が兄ながら恐れ知らずもいいところだと思う。
いまの強化された私でも恐いのに、どうして兄は平気だったのだろう。
そして、そんな兄を失ったレーナの深い悲しみがわかるような気がした。レガトを除けば、誰もが彼女を怖れ近づかない気がする。
金級冒険者になって、親しくしていた人達と距離をおかれたり、変に持ち上げられるようになって感じた疎外感を彼女は一人で抱えていたとわかった。
だから戦闘中にも関わらず、私はレーナを抱きしめた。黒い影のような竜がせまろうと、千体もの魔法武装された亡者の群れがせまっても、いま私は伝えたかった。
後でレーナには何やってんのって、怒られたけれど、それはそれで私らしいと笑ってくれた。
『不浄の闇』では、深層を越えて奈落、神層まで進んだ。深層以上に辿り着いた冒険者の話しを聞いたことがないので、何て呼べばいいのかわからないのよ。
地上に戻って報告しても信じてもらえないでしょうね。深層を越えた先に別の世界に通じる扉があって、同じようなダンジョンが先に続く。
今度は私達が侵略する側なのか、進むほど力を失い、弱る感覚に襲われた。
レーナの見解で、これは自由神に無断でやって来た異界の侵略者の特徴だという。
自由神は基本的にその存在の概念が示すように自由に受入れてしまう。
フィルナス世界は広く魔力に溢れている。力を欲するものにとって、この世界から得られる力は魅力的だ。
レーナは、これもまた自由神の課した遊び心だと笑う。この時は正直に言うと、レーナは頭がおかしいと思ったし、この先どうなるのかなんて考えられなかった。
でも、レーナが道を示してレガトが人を集めて探検をして行く内に、レーナの言いたい事はわかった気がした。
狂った神の一体を倒したくらいでは終わらない。そう考えるレーナに、私は最後までその背中を護るために動こうと、改めて決意した。
本編は完結しております。おまけの番外編、不死者殺しのアリルさんのお話しはいかがでしたか?
楽しんでいただいたのなら幸いです。




