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逃げた神々と迎撃魔王 第一部 〜 集う冒険者たち 〜【完結済】  作者: モモル24号
おまけの番外編

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不死者殺しへの道 ⑤

 黒ずくめの連中は作戦が失敗すると、隠れ家まであっさり放棄していた。行動が徹底しているせいで、人さらいに関しての情報がまったくない。  冒険者ギルドの依頼も手がかりが掴めないために、塩漬け状態になっていた。


 それでも私は一つだけ手がかりを見つけることが出来た。黒ずくめの者たちがいた秘密の部屋に飾られた旗だ。あれはテンプルク教団という、宗教団体の旗だろう。

 帝国の東方にあるナホビア魔導連合という国の主教だそうね。


 帝都はあまりにも人の出入りが多すぎて、例え昨日はいた人が今日は消えていてもさほど気にかけていない。子供が一人、二人いなくなろうとも、追跡するのに骨が折れるのが実情だった。


 狙われたのが貴族だから一旦彼らは撤収したのだろう。下手に居残ると、貴族や商人はお金で解決に乗り出す事をよく知っている。


 乗りかかった船というのだろう。私は公爵夫人からの依頼もあって、調査に協力する事になった。貴族関連で狙われるのは、西部の貴族の子供が多いのだとか。

 

 中央貴族達と違い、地方貴族は基盤はどうしても自領になる。領兵隊や騎士団も帝都に滞在させ続けるとなると費用が嵩み過ぎるため、警護人か臨時で維持費の安い冒険者に依頼するのが大半だった。

 

 帝都の冒険者ギルドは大きいものの、大きいからこそ派閥などの絡みがある。

 私が確認しただけでも、大規模クランが五つはある。そのうち四つは中央貴族の支援を受けていて、残り一つも東部貴族の息がかかっていた。


「帝都に来て、ギルドやクランの実態を調べておわかりになったでしょう」


 ロズベクト公爵が、ロドスやラグーンのギルドに力を入れるのには息子達だからと言う以外の理由があった。


 戦力を保持しがたい現状を打破するのに、冒険者が有効だと考えての事だった。自由気まま、欲深くわがままな冒険者を統率して戦力とするのは難しい。

 

「それで都市国家群への遠征があったんですね」


 ルヴィア公爵夫人は帝都で邸を任されているだけあって、なかなかの器量の持ち主だ。

 ベルク商会の事や、私達の事もすっかり調べあげていた。だから私達もレーナのお父さんの足跡を調べに向かった事があるのも知っていたようだ。

 

「私もガウツという方を調べていて、異界の存在に関わりがあると思っているわ。それと、帝都の人さらいが関連してると考えているの」


 『異界の勇者』を呼び出すためのなにかに人的な手段が使われていて、教団は首謀者だと考えるようになったそうだ。


「確証がないのと、情報にたどり着く前に消されてしまうのよ」


 とにかく手駒が足りない。そこにやって来たのが私だったというわけだ。

 公爵夫人が私へ支援を惜しまないのは、教団の情報を持ち帰りながら生きて戻ったことだそうだ。


 自分の実力を過信はしていないけれど、銀級冒険者くらいの手駒を使い捨てにしている相手と考えると、並の冒険者では無理なのはよくわかった。


 一人で探るしかなく時間がかかった。腕を磨くためにダンジョンにも潜る。そうこうしている内に再び教団の旗を掲げたならず者たちが帝都に根を張り出した。


 ルヴィア公爵夫人と知り合い三年近くが過ぎていた。相変わらず外部から入ってくる情報に進展はない。

 極秘に私が掴んでいたのは、教団が戻って来たのと同時に中央貴族の動きも活発になったことだ。


 中央貴族の肩入れする主要クランを調べたところ西部、つまりロズベクト公爵の力を削ぐための計画が練られていた。


 具体的な事はクランにも伝わっていない。ただ依頼主の中央貴族から、作戦に参加する人材を集めて準備をしておくように伝えられていた。


 四つの主要クランの内三つが下位クランとの合同作戦に参加、残り一つは帝都での悪巧みの片棒を担ぐのがわかった。

 

「ルヴィア夫人、西と東それぞれで冒険者クランを集めた大規模な作戦が遂行されるようです。正直、西は私一人で潰すのは厳しいわ」


 銀級冒険者までならなんとか捌く自信はついた。しかし、金級冒険者が複数となると勝てない可能性が高い。

 個々には勝ててもまとめての戦いが、という意味でね。


「西は夫や息子達になんとか対応してもらうしかないわね。アリル、貴女には彼らが向かったというテキルト山を調べて来てほしい」


 どうも、除外していた東の勢力のクランが結託してこちらも合同で動くようだ。

 帝都では密かに人さらいがまた増えだしていた頃で、事件の関連を調べるならこちらを先に洗っておきたかったので都合が良かった。

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