表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃げた神々と迎撃魔王 第一部 〜 集う冒険者たち 〜【完結済】  作者: モモル24号
おまけの番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

342/356

不死者殺しへの道 ④

 尾行するまでもなく、子供達は冒険者くずれの裏の住人に囲まれた。ゴブリンの子供がお宝を持ってオーガの里の中ではしゃいでいるようなものだもの。貴族の子供をゴブリン扱いするのはどうかと思うけれど、状況はそういう所ね。

 

 無駄に賢しいのか抜け道や裏道をよく調べてお付きの護衛を撒いて来たのが運の尽き、ね。

 怖いおじさんというのは、何も教育係の先生だけじゃないのよ。


 世の中には無法者と呼ばれる悪い大人がたくさんいる。まあ、一番上の子が見たところ五歳くらい、下の子なんて三歳くらいじゃないのかな。

 ギルドだって、貴族を蔑ろにする気はないと思う。でも、さすがに困ったろうね。


 私が心配しなくても、ギルドもしっかり職員を二人程つけていた。

 職員がかけた手間や余計な経費は、後で請求するなり恩を売るなりするつもりのようだけれど、見込みが甘い。


 帝都のごろつきは意外と手練れで強い。大きな街というのは、それだけ暗部も広がる。そうした輩相手に荒事を収めるためには、相応の実力が求められた。


 子供達を連れ去ろうとする男達は並のごろつきだったけれど、職員とやり合っていた三人と、この場のリーダーらしき男は強い。

 職員もそれなりの腕前だったろうに多勢に無勢、手間を惜しむリーダーが参戦してあっさり武器を奪われた。


 あの男はわたしに気づいているようね。職員が足止めになる形で戦っている間に子供達を連れ去ろうとする男共を倒す目論みが破られた。


「残念だったな、女」


 賊のリーダーはそれだけ言うと、時間を与えず囲む。人を攫うのに手慣れた感じだ。職員より私の実力が高いだろうと踏んで、獲物を確実に運ぶ訓練された兵隊のようだ。


 最悪自分達がやられても仕事は果たせると言ったところね。つまりは、ごろつきなんかじゃなくて、子供たちを護衛から逸れさせ企み事をする連中という訳だ。

 はぁ、中央貴族達が企み好きで抗争を繰り広げているのを知っていたのに、初日から遭遇する?


「残念なのは、そっちのようね。私がたまたまやって来た日に企み事を実行するなんてね」


 子供達の反応は見えている。レーナの魔道具が応用が効くので助かったわ。厄介なことに、攫った連中がバラバラな方へ逃げ出した事ね。

 職員だけではなく、護衛も探し回っている中で固まって動くわけないもの。


「時間稼ぎはさせないわ」


 私はそういうなり駆ける。リーダーの男は意表をつかれたようで少し慌てた。


「逃がすな、始末しろ」


 私は彼らの本命の一番小さな子供を追う。あの子だけ幼く、身なりがさらに立派だった。政治絡みか宗教絡みか、すぐに殺すつもりはないのだろうけれど、あの子供が悪い貴族の側にいない事を祈るばかりだわ。


 私は不意に足を止めて、追いかけて来た足の早い男の一人の喉を切り裂く。まさか攻撃されると思ってなかったようで、男は驚きの表情のまま、叫ぶ事もできず絶命する。


 私は再び追いかけ始める。単独で動けば勝てないとわかり、私を追う男達の足は鈍る。リーダーの男は強いのだろうけれど、装備が重く足取りが鈍い。


 彼らは目的地をわかっているだろうから、そこへ到着する前に奪い返す。幼い子供は運びやすいように、縛られ袋に入れられていた。こいつが足を止めていた理由がわかり、背後から強襲する。


 私は子供をそのまま抱えて、別の子供達へと向かう。これだと私が人さらいみたい。子供を解放して一緒に歩くと、他の子を追うのが難しくなるから少しの間は我慢してね。


 もう一人の子供を助け出してから、私は二人を解放した。


「悪いやつに捕まったのはわかっている?」


 二人目はギルドの受け付けで話していた年上の子だ。私が助け出した事は理解しているようで素直に頷く。

 

「あとの三人を助けるまで、この物陰から絶対動かない事。護衛の人が来ても、ね。約束出来る?」


 お付き護衛が何名いるのかわからないけれど、一人二人は怪しい連中に関わりあると考えて動くべきと思った。

 年上の子供は私の言いたい事を理解したようで、幼い子を守るように抱きしめた。


「まっている間、この飴玉でも舐めてなさい」


 私は二人を隠すと収納から飴玉の入った小袋を取り出して渡した。


 帝都の闇というか、他所の地域まで陰謀を企むような連中なので、そのお膝元にも隠れ家はたくさんあるようね。幸い互いに離れた場所にあるので個別に潰してゆける。

 

 攫った男や、隠れ家で待機していた連中はそれほど強くない。本命の子を待っていた隠れ家には強い連中がいそうね。今頃は実行役のリーダー達と揉めていそうだ。


 私はレーナの探知魔法を頼りに一人ずつ迎えにいき、路地裏の物陰に隠れている二人の子供の所まで運ぶ。

 五人全員の救助が間に合ったのは良かった。


 もう辺りは真っ暗で、人目にはつかないけれど子供達五人を連れて歩いていれば、探している連中にはバレる。

 彼らの親のいる屋敷に行けばいいのだけど、逃げられた事がわかれば編みくらい張るわよね。


 私はそのまま子供達を待たせ、商業ギルドへと向かう。ベルク商会の関係者がいれば話しがしやすいと思って探したら一人いた。


 ベルク商会の商人に、ロズベクト公爵の邸の場所を聞く。

 帝都での影響力は少ないかもしれないけれど私の知っている中で信頼出来そうな力ある貴族は公爵しかいなかった。


 ベルク商会の商人には私、というか『鋼鉄の誓い』の話しは商会内に伝わっていて、解散した後でもパーティーメンバーだったとわかると便宜をはかってくれる。


 その伝手が使えて助かった。公爵はもちろん不在だけど、理由を話しベルク商会の紹介状を見せると子供達を預かる事を引き受けてくれる。


 公爵邸の留守を預かる、公爵の第一夫人は話しのわかる人のようで、私の簡単な説明と、子供達の顔を見ただけで全てを察して動いてくれた。


 貴族の事は貴族に任せて、私は念のために人さらい達のアジトを探る。

 彼らの目的を知っておきたかったのと、私の事を追ってこられても面倒だったからね。


 実行犯のリーダー達と下っ端は処分されていた。あれだけの手練れをあっさり切るって、帝都は人材が豊富なのだなと思う。

 私の事に関しては、失態をおかしたリーダー達が何も言わぬまま処分されたようで知られていないようだった。

 

 見慣れぬ国の旗。怪しい黒ずくめの集団は、作戦が失敗したにも関わらず淡々と事務作業をこなすように指示を飛ばして解散してしまう。追跡するか迷ったけれど、止めた。

 ここまで戦えたのも潜入してバレる事がなかったのはレーナのおかげだものね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バナー用
 推理ジャンルも投稿しています。応援よろしくお願いいたします。↓  料理に込められたメッセージとは
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ