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逃げた神々と迎撃魔王 第一部 〜 集う冒険者たち 〜【完結済】  作者: モモル24号
おまけの番外編

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不死者殺しへの道 ③

 『不浄の闇』の探索は私一人でも問題なかった。慣れないうちは目眩がしたけれど、レーナの魔法は不死者や霊体にも反応した。


 迷宮も、探知のおかげで迷わず進めてしまう。何より私を守る結界には不死者が触れることが出来ないのに、こちらは一方的に不死者に有効な剣が使える。


 それにこのダンジョン探索で危惧されている、食糧の確保も私には問題がない。サンドラさんの宿屋の一室分くらい用意した食糧があれば、私一人なら三年以上は持つと思う。

 そんなに買うつもりはなかったのよ。


 冒険者を返り討ちにした所を見ていた露店の商人が囃し立てるものだから、つい買ってしまったの。


 絶対仲間に見られていたら買い物も満足に出来ないのかと笑われる。レーナとか、自分の金銭感覚棚にあげて言いそう。


 あの娘は他は完璧なのに、料理が何故か駄目だったな。レガト、なるべくサンドラさんに面倒見てもらいなさいね。


 三十階層あたりまで潜りわかったのは、レーナの魔法が強力過ぎることだ。このニルトの形見の剣は、不死者相手なら霊体だろうが鋼鉄のリビングアーマーだろうが紙を切り裂くより簡単に裂いてしまう。


 浄化の輝きが起きるたびに私が魔力で発動させてるように見えるので、絶対誤解される。

 

 しかもニルトの剣は私が投げつけても鞘に勝手に戻ってくる。折れてもきっとすぐに直るんだろうというのも、使っていてわかった。

 


 ロドス近郊のダンジョンを一通り潜って回り、資金稼ぎが出来た。レーナの装備も異常に強い事がわかったので、ある意味安心して旅に出れる。


 パーティーを組んでいた時は帝国西部しか見てなかったので、帝都や東部も見て来ようと思った。ガウツさんの情報は、都市国家群の方があるのはわかっているけど。あの人を呼び出した可能性のある集団が私は少し気になった。


 ロドスから帝都インベキアまでは歩くとかなりの距離がある。途中の街を経由しながらの馬車旅で六十日はかかる。帝国って無駄に広いのよね。


 帝国内の水運が発達したのも、そのためだと思う。実際の距離はそこまでないはずなのだけど、途中の街道がいくつか荒れやすく足止めをくらいやすい。


 また盗賊の類も多いため、隊商(キャラバン)を組むので移動が遅くなりがちなのだとか。


 急ぐならロドスを北上してラグーン方面へ向かい、インディス川を下る定期船で向かうのが一番早いそうだ。

 食料品を購入したついでに、帝都への行き方を訊ねてみた。人の良い感じの商人の助言どおりに船での移動を選ぶ。

 

 ギルドでは素材の売却を行う。レーナの収納は見せたくないので、幌付きの荷馬車を借りて人のいない所で取り出して積んだ。

 貯め込んだ素材やらなんやらを小出しに売却するのは面倒だもの。


 でも、荷台に一杯に積んだ素材を見て、ギルド職員に怒られた。全部まとめての査定が大変な労力になるのと、帝都や公都なら大丈夫だけど小さな街だと処理しきれない。

 一番の問題は、お金を用意出来ない事があるからだ。


 ロドスは大きいギルドなので問題はないが旅をするなら注意するように言われた。鋼級冒険者なのに銅級で知る初歩的な買い取りの作法を知らないとか、レーナを笑えないわ。


 ベルク商会が大陸全ての都市に基盤を起きたがるのも、お金のやり取りが楽になると言っていた気がする。


 定期船に乗るならラグーンまで行った方が早かったけれど、私は途中の街から馬車に乗り定期船の停まる港町へ向かった。

 レーナにかわり見聞を広めるのなら行った事のある街より知らない所を通った方がいい。

 

 だからと言っても馬車の長期旅は厳しいので、船での移動するくらいはいいわよね。


 定期船は一日に何便も出ていて、平べったい筏にも見えるけど貴賓席用の船室や船長室もあって、大きな船だった。

 帝都へは様々な人が集まるので、移動の足も需要が高くなる。

 インディス川の川幅は上流のラグーンと下流域では十倍以上違うので、一気に帝都へ行くのなら大型船が出ている港町から乗ることを薦められたのはそのためだ。


 

 帝都インベキアは毎日多くの人々が集まってくる。商人、冒険者、働き手と実に様々な人がいる。

 私のような冒険者はダンジョン目当てに来るものが大半だ。


 未攻略のダンジョンはロドスにもあったけれど、『不浄の闇』は先へ進むほど攻略難度があがり、消耗が激しい。

 帝都にあるダンジョンは難度は同じくらいでも魔物に刃が通じるので稼ぎがいい。


 まずは冒険者ギルドにいき登録を済ませる。同じ帝国内なので籍はロドスのままにしておいた。鋼級の冒険者など、帝都には掃いて捨てるほどいる。

 女一人で冒険者活動しているものも中にはいる。


 ただ絶対数が少なくて物珍しいのか誘いにかこつけた、いやらしい目は帝都でも変わらずにそこかしこで声がかかる。


 もちろん表に出るまでもない。触れようとした瞬間に身体を入れ替え、相手の勢いをそのまま利用して投げ飛ばしてやったわ。


 ざわつくギルドの酒場が一瞬静まる。いつも起こる揉め事だとわかると賑わいはすぐに戻った。洗礼というほどではないけど、流石に慣れたわよ、もう。

 


 『竜王の爪跡』に私も潜ってみたけど、魔物の種類が多くて素材を手に入れるのには向いていた。ギルドで貯まる前に素材を売却し、一泊だけ取った宿へ向かう。私も一応学習するのよ。


 初心者の受け付けあたりであからさまな子ども達のパーティーが揉めていた。地方ではお金さえ払えば、正規の銅級冒険者にはなれる。


 でも大き過ぎる街になると、子ども達の力を借りずとも人手はすぐ集まるので一般的に認められる十二歳までは見送られる事が多かった。


 彼らはそのよくいる冒険者に夢を持ってやってきた口だろう。全員が身なりもよく、子供用にあしらえた武装は売れば良い金額になる。

 目にしなければ良かったと後悔する。


 見覚えのある紋章。そんなのこの帝国ではありふれていて帝国民なら誰でも一度は目にしていた。彼らは帝国貴族のお坊ちゃんお嬢ちゃんだ。

 影目付けがいない。冒険者の真似事は安全なお城の中でも出来ただろうに。

 

 頑として受け入れて貰えず、子供達は一旦帰ろうと言い出した。こんな夕暮れ時のゴチャ付いた中で子供だけで街中をうろつくのは危険だった。

 私は、この世間知らずはのお坊ちゃんお嬢さんを尾行して守ることにした。

 

 我ながらお人良しと思う。でもレーナの力を、使うなら正しく思える事に使いたいと思っていたのだ。

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