冒険者という輩はそういう輩
警戒をしながらダークネスヒドラの素材を手分けして行う。作戦を練り、連携を取って動けたので一つ目竜の時のように偶然に左右されず、自分達の実力で倒す事が出来た。
ただラングとウロドとがダメージを負ってしまった。重さに苦戦した経験があるのに、重さで逃げ遅れるのを想定していなかったのは問題だろう。
幸い生命に別状はないが、前に出て身体を張るものや、防御の要になっているものについてもっと動きを考える必要がある。
不幸中の幸いというだろうか、怪我した二人を治してあげたいと強く願ったイウルが回復魔法を発現した。
回復が出来なくてもいいとラクトはパーティー内の役割を与えたので、当人も気が楽になったのだろう。
エルヴァは魔力の流れから素養はあると断言していたが、本人には黙っていた。
ラニアとイウルの二人で回復し、ニーシャが自分で調合し用意してきた薬を飲ませる。
体力と魔力を急速に奪い石のようにする呪いだったらしい。バジリスクのような能力もあったので能力的にそっちの亜種が正しい気がする。
見た目がヒドラに近いので、記録ではヒドラ扱いになってしまったが。
ラングが回復し回収も済んだので、いったん休息を取ることになった。
今回の遠征は浅層、中層二段階の拠点を設けた上に、補給部隊と交代制で長期の支援体制をつくっていた。時間的には以前よりも余裕はある。
「今回は進もう」
ラングはいつも慎重だ。危険と判断したら、無理はしない。
「理由は?」
ラングの言葉に、珍しいものをみるようにエルヴァが尋ねる。
「慣れるとダレるからな。いつでも誰でもいけるとなると、協力も疎かになりがちだろう?」
単独ならともかく、今回はキールスのギルド総出に近い。ライバルのギルドに攻略で、先んじてやる気を出してくれたおかげで支援体制は万全だが、次は俺たちもと言い出してもおかしくない。そうなると収集がつかなくなり、結局振り出しに戻るとなりかねない。
ラングは慎重だが現実的で、今回が攻略機会の最後のチャンスと考えていた。もし再挑戦するとなると、クランメンバーが今の倍以上に増えてからになるだろう。
ラングの考えに仲間達も納得した。
ウロド達もやっかみに備えて鍛えた経緯もあるし、新人達は尚更だ。
休息を終え『海竜の咆哮』は深層の先へと進む。




