冒険者の娘 ②
ズリッチという少年は南区側の農村出身の弟妹を連れていて、マーズクという少年は同じ南区の農家の少年で、やはり弟妹を連れて冒険者見習いをしていた。
わたし達に声をかけたのは、弟妹を冒険者として連れて行くには幼過ぎるからだった。
見習いの報酬は安くて、時間もかなりかかる。効率は悪いけれど、色んな仕事の体験を重ねる事で、冒険者にならなくても向いている仕事が見つかるのが利点でもあった。
ズリッチ達は、孤児院の子供達の何人かに声をかけていたようだ。
年齢的に言えばわたしと同じ年の子が一人いるけれど、どうやらその子には断られたみたいね。
彼女は最近来たばかりだから、馴染むまではそっとしておく方がよいかもしれない。
わたし達も、彼らの誘いは断ろうと思った。背伸びをして無理をして、怪我でもしたらみんなに迷惑をかけるから。ただズリッチは、そう言い出すことを予測したようで首を振った。
「お前、文字読めるんだろ。なら銅級の依頼の報酬額見てこいよ」
ニヤつくには、根拠があったらしい。わたしは依頼の貼ってある掲示板の前まで行く。常設依頼がいくつか更新されていて、わたしの知っている報酬額より明らかに上がっていた。
これを見て、彼らは見習いをやめようと思ったのかもしれない。
「見ただろ。いまラグーンは新人冒険者不足なんだ。みんな鉱山に行っちまうからな」
稼ぎのいい方へ人は流れるのは当たり前で、わたしだって今流されようとしていた。
「ただいきなりは無理なの俺達もわかってる。護衛用に一人分か二人分の武器を買ってそれから常設の依頼の薬草を集めれば稼げると思うんだ」
護衛役は年上のズリッチ達が務めるという。わたし達に協力してほしいのは、いつもやっている稼ぎの良い仕事を、他の街や村の子達に取られないよう確保するのと、人数を集め資金を貯めることだった。
先にクランを作るようなものだと言われ、わたしは話しに乗ってしまった。
集めた子にはズリッチとマーズクが、なるべくわかりやすく説明していた。
仕事の依頼は文字の読めるわたしとハープ、ホープが集め、ズリッチ達と孤児院の子に振り分けた。
人数分まとめて依頼を取るから効率はいいけれど、稼ぎになる仕事ばかり選ぶと厳しい仕事も多くて、安くてもやりたい仕事は選べなくなる。
それでも最初は違和感なく、みんなで頑張ろうってなっていた。時期的にも領内が停滞していて、辺境伯領の懐事情が苦しいのだと、院長先生がこぼしていた。
支援金は打ち切りにならなくても、減額されるだけで孤児院の経営はかなり苦しくなる。
だから深く考えずに思わず乗ってしまったせいで、わたし達は痛い目を見る事になった。




