冒険者の娘 ①
わたしは冒険者の娘だった。過去系なのは、両親が任務の最中に亡くなり孤児となっていたから。
ラクベクト辺境伯爵様の領都ラグーンには大きな孤児院があって、わたしはその孤児院でお世話になる事になった。辺境伯様はもともと冒険者をしていたというので、ラグーンギルドのギルドマスターも兼任している。
おかげでわたし達のように不慮の事故で両親を亡くしたものや、商売で失敗して、親が消息を絶ってしまったもの、何かの罪で親がなくなり落ちぶれた貴族の子供など、同じ孤児と言っても境遇は様々だった。
ラグーンにある孤児院の院長先生は、優しい方で料理も上手。領主様の計らいで、ラクベクト辺境伯領内の農村の方々から、沢山お野菜が届く。院長先生も腕のふるい甲斐があるわ、と喜んでいた。
時々猟師の方も捌いた兎や猪のお肉を持って来てくれたので、孤児院の子が飢える事はなかった。
わたしには仲間というか友達が二人いた。ハープとホープと言う名前の双子の男の子たちで、両親同士が冒険者としてパーティーを組んでいたので、仲が良かった。
わたしと一緒に二人も孤児院へ来ていた。二人ともわたしより一つ年下なのに、ずっと気づかってくれる。
悲しいのは二人とも同じなのに、自分たちは男の子だからと格好つける優しさがありがたかった。
わたしの方が一つ年上なのだけれど、生まれた時期は殆どおなじ。帝国では、新年祭の前後で年齢が変わるから仕方ないね。
以前は三人で一緒に、良く冒険者ごっこをしていた。わたしは、お母さんに作ってもらった弓と、鏃のない矢を使って練習したし、ハープとホープは木剣を振り回して、英雄をどちらがやるかで揉めていたっけ。
孤児院に来てからは、遊ぶ暇はあまりなくなった。食べる事は出来たけれど、自分達のお小遣いや小さな子供達の面倒を見るために働くようになったからだ。
それでも冒険者ギルドまで行って、子供でも仮登録が出来て、石級のプレートをもらった時は、三人でお水で乾杯した。
お仕事は雑務、お掃除だったりお手紙の配達だったり、作業のお手伝いだったりと、ラグーンの街中で働く事が多かった。
もう少し大きくなれば本物の冒険者にくっついて行って、荷物持ちをしたり、薬草採取を手伝ったりしたと思う。
でもラグーンの近くには鉱山ダンジョンがあるためか、新人冒険者の人達はみんなダンジョンへ行ってしまう。
未熟な子供達を連れて、近場で教えて育てようとする人がいなかった。
そんな時に農村から来た子供達の兄妹から、一緒に冒険者となるために協力しないか、と話しを持ちかけられた。
お読みいただきありがとうございます。
本編は既に完結していますが、おまけの番外編を追記しています。
第八章 冒険者の娘
ラグーン孤児院の子供、リモニカのお話しとなります。




