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逃げた神々と迎撃魔王 第一部 〜 集う冒険者たち 〜【完結済】  作者: モモル24号
おまけの番外編

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辺境伯の四男坊④

 ズリッチ達は思っていたよりは真面目に働いている。時折やって来るゴブリン達やトロールに、はじめは恐怖してまともに戦う事も出来なかった。


 それが今はゴブリンなら一対一で捌けるくらいになったし、弟や妹達も怯えない。僕も慣れたが、彼らも後がないから必死だった。


 きっかけはあいつの言葉だ。


「実家に戻って、小作人として一生を過ごすのなら帰っても構わないよ」


 駐屯地を囲う柵と寝泊まりする建物が出来たので、あとはゆっくり必要なものを作っていくだけだ。


 目処がついた時点で僕の任務も終わり、ズリッチやマーズク達は解放される事になる。

 犯罪労働者ではなくなるので、ここに残って労働を続けるのなら、きちんとした雇用契約が発生するという事だ。


 僕としてはズリッチ達が希望するならば、見習い領兵として雇おうと考えていた。父上からは僕の好きにしろと言われている。

 予算はあまりないけれど人手不足の現在、お金で人材確保出来るならしておくべきだど思うのだ。


 二人に声をかけると、弟妹もまとめて雇ってくれると言うのなら良いと返事を貰った。冒険者になるのは諦めがたいのだろう。

 でもレガト達のように稼ぐには、ズリッチ達の実力では厳しいとわかっての判断だったようだ。


「慎重になったな」


「そうでもないよ。レガトがこの前来て話してくれたんだ」


 ズリッチ達が真面目に働くのをゴブリン戦隊の仲間から聞いたレガトは、不安定な冒険者よりも、なれるなら領兵になっておく方がいいと伝えたようだ。

 とくに試験を受けたり知己がいたりするわけではないズリッチ達に、冒険者として躓いた時になる仕事はないのが現状だ。


 ラグーンの街中では彼らの働きぶりは最低の評価なので、雇ってくれる店などない。自業自得なので、ズリッチ達もそれは文句は言えない。


 鉱山の案件も解決に向かえば冒険者として稼ぎがあるかもしれないとはいえ、ド素人のズリッチ達にどこまで出来るか疑問視される。


「それなら確実に手に職をつけて、トロールの駐屯地で経験を積んだ方がいいと言われたんだ」


 冒険したければ弟妹の成長を待って、領兵でチームを組めばよいと。


「あいつ、思考がおっさんだよな」


 当人がいたらキレられそうだけど、パーティーリーダーってそういうものなのかと僕なりに尊敬もしている。


 ズリッチ達も考えは同じようだ。絡んだのはレガト相手だったけれど、被害者は孤児院の子達だ。


 ズリッチもマーズクも彼らの信頼を裏切った。その罪滅ぼしは終了したけれど、あくまで社会的な責任だけで、被害者には何かしたわけではなかった。


「寄付という形もあるけど、領兵になって、彼らの安全を守るのもいいんじゃないかって」


 結局自分達の生活の確保が一番になるけれど、申し訳ない気持ちがあるなら働きで返せというわけだ。


 甘いと言われるのだろうけれど、害を受けたレガトや孤児院の子供達が許したのなら、僕がとやかく言うものではなかった。


 父上にはズリッチ達を領兵見習いとして採用した事だけを報告した。僕に裁量を任せたのだから、意見はすんなり通る。例え犯罪者だったからと言っても、正しく罪を償ったの以上問題ないと僕は判断して駐屯地で働く事で採用した。


 彼らが何か罪を再び犯せば、責任は全て僕に来る。

 責任者として命令を下したり、登用する事で自分以外の行いに義務が生じたりと、上に立つものの責務ってこんなにも重圧がくるのかと思い知らされた。


 わがままに権力をかさにきて自分の思い通りに命令するだけなら、どんなに楽だっただろうか。任命を行ったあと、僕は不安でたまらなかった。


 自分自身は高圧的な態度を反省し、修整だって出来る。でもいくら信用出来ても、他人は他人だ。


 いつ気が変わるのかわからない。だからこそ人を見る目が必要なのと、それを受け入れる度量がいるんだと、身を持って知った。


 もう僕の命令で契約は受理されて、責任は生じているから逃げられない。こんなことを思うのは、心を入れ替え頑張った彼らに失礼かもしれない。

 でも今後も起きる事なのだからと、僕は慣れていくしかない。


 僕が信頼したように彼らにもその信頼に応えて欲しいと、願わずにはいられないのだった。











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