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逃げた神々と迎撃魔王 第一部 〜 集う冒険者たち 〜【完結済】  作者: モモル24号
おまけの番外編

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辺境伯の四男坊②

 僕は今度こそ上手く言おうと慌ててしまい、思ってもいない言葉を吐いてしまった。招待状を渡したのに見てもいなかったとか言われて、動揺してしまったのが悪い。


 また喧嘩口調になってしまい、ただ嫌な貴族の子供感丸出しに騒いだだけになった。

 投げ捨てるように自分の言いたい事だけを言って、後の事を考えずに立ち去ってしまった。


 レガトという少年は、ふてぶてしくていたずら好きだ。相手が貴族の子供だというなら、貴族の立場で逆らえない形で逆襲するような性格だと、この時に知った。


 あの悪魔のような少年は、僕を冒険者にした。それもお付きの騎士二名を巻き添えにして。

 父上も頭の上がらないという、ギルド食堂の女将エルヴァに、副ギルドマスターのクォラまで保証人とした念の入用に僕は震えた。


 同じ年頃の子供だというのに肝も座っていて、仲間達から信頼されていて羨ましかった。父上は先走り、失敗した僕を叱らなかった。


「一度や二度の失敗でいちいち塞ぎ込んでいたら、貴族どころか冒険者としてもやっていけんぞ」


 父上もかつては冒険者だった。僕は兄弟の中で一番父上に似ているらしい。

 父上も調子に乗ってやらかしてしまった事が、度々あったようだ。きっとその言葉には、父上自身の経験から来る助言が含まれていたように思う。



 ラクベクト家はいま中央貴族達のひそかな攻撃にさらされていて、せっかく見つけた鉱山ダンジョンの収益が上がらず財政が厳しい状況だ。

 レガト達は、その状況を打開するかのように動く。


 ロズベクト公爵の三女、シャリアーナがやってくると、彼女からの指名で専属護衛に近い形でパーティーを組みラグーン北の森周域を探索するようになった。そして新しいダンジョンを発見してみせたのだ。


 凄い奴だと思った。焦らずレガトのパーティーに加えてもらっていれば、今頃僕もダンジョン発見の栄誉にあやかれたのに、そう思うと悔しい。


 あいつが凄いのは、手柄の全てをシャリアーナに譲った事だろう。

 冒険者として名をあげるならば、新ダンジョンの発見者の名声は誰もが欲しがる。


 でもシャリアーナに譲った事でレガトはロズベクト公爵に恩を売り、父上に対しては公爵が借りを作った形をつくった。当然父上もそれがわかるから、レガトには恩を感じる事になる。


 先々を考えると、一時的な名声よりも大きな価値になるのだ。

 発見者の名はシャリアーナでも、彼女一人で成し得たわけではないから、帯同した冒険者パーティーとして名誉は残せる。


 普通の冒険者は、そこまで考えてなどいない。貴族の令嬢に雇われただけで舞い上がるだろう。


 そこで生じたコネを上手く活かして報酬のいい依頼を受けて、生活の糧にしていくのが成功の秘訣だからだ。


 鉱山ダンジョンに集う中央貴族の雇ったクラン連合が、悪い意味でのいい見本になる。

 大した危険を冒さず高い報酬が入るなら、それが一番だと思うのは当たり前の事だ。


 でもレガト達はその当たり前のことをしない。子供だから冒険者に夢を見てるなんて言う奴もいたけど、レガト達は冒険者だから冒険をする。


 単純でわかりやすい。そして、そのおかげで挽回の機会が思うより早く訪れた。いや、まあ僕の失態の原因がレガトなので、おかげでというのも変か。


 でも、父上は良い機会と捉えて彼らの申し出を受けて新たなダンジョンの開拓の指揮を僕に任せた。


 兄達ではなくて僕に任せたのは、仮にも冒険者だからだ。任務には危険が伴うし、開拓する労働力は基本罪人だ。


 鉱山があるので重犯罪者はそちらへ送られるのだけど、今は占拠されているため犯罪者は別な地へ運ばれていたはずだ。


 その罪人達はレガトの仲間達と因縁があるようで、レガトにちょっかいをかけ返り討ちにあった者達らしい。


 父上のちょっとした試験なのかもしれない。レガトに因縁のあるものたちが、彼の為に働けるかどうかのね。


 もちろんその中には僕が筆頭にあって、不満を持つかもしれない彼らを使って開発をやり遂げなくてはならなかった。













 

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