夜魔の王女⑨
びっくりするぐらいの変態がいた。人間のはずなのに、悪魔よりも徹底しているのが凄い。
私が衝撃を受けるくらい変態は、レーナに纏わりつこうとしていた。
高度三千Mから落下させられても、色んな液体巻き散らかして恥をさらしても、一向にめげないタフな精神力には私も見習わないといけないわ。
ただレーナやレガトの使った食器を舐め回そうとするのは、下品だから止めてほしいわ。気持ちはわかるけど、他の子達が真似をしだすと収集つかなくなるからね。
変態だけど、理知的な商人の彼女は私の言いたい事は理解してくれた。あくまで主体はレーナやレガトなの。
命令がないのに勝手にご褒美に預かって、本当に満足なのかって話しなわけ。我慢しておあずけされてるからいいのが、変態にも伝わって嬉しいわ。
変態がわかってくれたようなので、レガト達について行く事は止めなかった。
まあ、放っておいても自力で悪魔化しそうだけどレーナの所に置いておけば、カルジアの従者に加えてくれるでしょうからね。
レガトも気にしていたので太古の龍神も焚き付けて、レーナの所へと向かわせた。
あのがめつい爺さんの隠し持つお宝を探して、レガトに教えて上げるのが私の使命だ。
古代遺跡なのに宝物がショボいのは、全部ダンジョンの主が渋っていたからなのよね。
ちょうどいい所に変態の残していった、冒険者の娘達がいたので探索を手伝わせる。
なんか無理だとか、死んぢゃいますって喚いていたけど、じじいのいない今がチャンスなんだから行くしかないのよ。
何度かの探索を続け、魔力反応のない隠し扉を発見する。普通は反応があるのに、じじいの隠し扉は単純に穴を掘って扉ごと土に埋めていた。
開けた瞬間、膨大な魔力とともに転移門が開き、太古の龍神が戻って来た。
《この悪さ好きの夜魔め、わしのお宝を簡単に奪えると思うなよ》
いきる爺さんの声に、三人の女の冒険者が震える。いま大事な戦いの最中じゃないの、ねぅ、じじい?
執念だけは認めてやりたいけど、転移門の先にあるお宝は空っぽだ。
太古の龍神がプルプル震えている。空いた宝箱の中に紙切れが入っていて、
レーナとアミュラの筆跡で街づくりの資金に流用する旨が記されていた。
あとで返すと書いてあったけど、太古の龍神は放心し固まってしまった。
面倒だけど転移門に、私はデカブツの龍を魔法で押し込んで扉を閉じた。
レガトの喜ぶ顔が見たかったけど、レーナに先を越されていたんじゃ仕方ない。
今頃太古の龍神も何食わぬ顔で戻り、戦いの後でレーナに問いただすと思う。でも残念、レーナはもう持っていないよ。
がめつさでは太古の龍神より上手のアミュラが隠し持っていると思うのよね。あの娘、普段は感情が薄いから、私では何考えてるのか読めないし。
レガトの戦勝祝いにお宝が欲しかったけれど、別のものを探さないわね。
レガトもレーナが結婚して、レガトを産んだ歳になったのよね。
本当にそろそろ本音を言ってもいいと思うの。
私がどうしても欲しくて欲しくてたまらないって言うのなら、特別にあげてもいいのよ?
というかもういい加減に私をもらって下さいな。
本編は完結しております。おまけの番外編、夜魔の王女編はここで終わりとなります。




