夜魔の王女③
レガトの朝は早いので私も眠い目をこすりながら仕事場に行く。レガトの為に集めた新人冒険者達の資料があれば、友達も選び放題の選り取り見取りだもの。
きっと大喜びで私の功績を、レーナにも伝えてくれるはずよ。
受付でレガトを待っていると、朝からいい笑顔のミラから拳骨を落とされた。なんか仕事を任せた受付嬢がやらかしたらしい。
その娘の失敗はその娘のせいであって私のせいじゃないのに、ミラってば理不尽でしょ。
早くレガトに資料見せたいのにミラに控え室に連れて行かれ、農村の子供達についてあれこれ聞かれた。
そして私が持っていた冒険者の資料を見て、ミラが目を剥き額に手をやっていた。
資料の中に何らかの計画書が紛れていたようね。ミラが副ギルドマスターを呼び、資料のいくつかを見て何やら言い合っている。
どうでもいいけどレガトの友達は私が見つけてあげたいのだから、邪魔をしないでほしいの。
領主邸まで付き合わされて、どこで手に入れたんだとか、どうするつもりだったのだとか散々聞かれた。
もう、何度も言ってるじゃないの。レガトのために、お仲間になりそうな子を探してあげているだけだって。
そもそもレーナとレガトが大切にしているこのラグーンの街を、私が破壊する計画なんか立てると本気で思ってるの?
冗談でもそんな事を口にして御覧なさいよ。大変な目に合うんだから。
ラクベクト辺境伯がラグーン襲撃計画の話しを誰かに持ちかける気があったのかどうかをわざわざ確認したせいで、私の意識が飛んだ。
「ヒルテさん、説明」
やった! 私いよいよレーナに召喚されたわ。
目の前で大量のグレーターリッチの魔法が飛び交う中、私はレーナの拳骨をもらう。
アルプ達を巻き込み、呼び出し鉱山前の基地の話しをした。
レーナが攻撃の手を休めたため、アリルが一人になって何か叫んでるけど、私とレーナの時間を邪魔しないでほしい。
「辺境伯に援軍を出すようにロズベクト公爵に伝えたい所だけれど、名目が薄いわね」
レーナは一瞬考えて、妙案とばかりに私に命じる。
「公爵令嬢にシャリアーナという娘がいるわ。活発な娘だからヒルテさん、焚き付けてレガトの所に向かわせなさい。」
名目づくりのために令嬢をだしに使うとか、やっぱレーナって素敵ね。
でも夜魔遣いが荒い。公爵邸に行って公女を煽って来て、それからラグーンに戻って襲撃の帳尻合わせを私一人でやれと。
無理矢理ダンジョンの深淵から公爵邸へ放り出された私は泣きながらシャリアーナの寝室へ向かった。
シャリアーナという娘が騒ぐ前にアルプ達が結界を張った。
公女は中々物分りがよく、アリルに憧れてるようで名声を得られるならと話しに乗ってくれた。
昼間もサボれず夜通し駆けずり回りラグーンへ戻った私は何か忘れてるのを忘れて、ギルドの受付に座る。
レガトは朝からよく依頼を受けに来た、孤児院の子供達とパーティーを組んでいた。
流石私のレガト。自分で仲間をつくれたんだね。私を心配そうに見るけど、大丈夫よ。女の子の一人や二人、男の娘がいたって大人の余裕で受け止めてあげるからさ。
レガトの趣味を考えて小悪魔達を紹介しておく。
アルプはレガトが好きそうな小悪魔感いっぱいの男の娘だし、インプはクールな装いの少年だ。
ケルプも男の子のような格好のぼくっ娘な女の子だからハマるかも。
なんかレガトに私の趣味を押し付けるなって怒られたけど、そんなに盛大に照れなくてもいいと思うの。
本編は七章までで完結しております。
八章はおまけとして現在、夜魔の王女編 ヒルテさんの暗躍? ぶりを追っています。




