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逃げた神々と迎撃魔王 第一部 〜 集う冒険者たち 〜【完結済】  作者: モモル24号
おまけの番外編

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夜魔の王女②

 優男の亡くなった時のレーナの怒りは凄まじかったわ。私は、いたずらは好きだし困らせるのはもっと好き。


 でも、怒ったり悲しかったりは嫌い。レーナには笑っていてほしい。私はレーナを笑わせて、楽しませるために、宿主になって養ってもらうために生きようと思った。


 いけ好かないラズク村の村人が、自分勝手な理由でレーナとレガトを追い出しにかかった時は、ムカついた。

 レーナ達に遠くへと出て行かれたら、私の行き場なくなるからね。


 とりあえずレーナにかわって私とアルプ達は文句を言いに来た連中の影について行った。家の中で使う薪に、カカシラの茎を混ぜて置いてあげたわ。

 村のあちらこちらで悲鳴が上がり騒ぎになって、しばらく村人同士罵りあってたっけ。


 山小屋にレーナ親子が移ってからはしばらく暇だった。アルプ達はレガトのいたずらにコッソリ協力して楽しんでいたけど、私はサンドラと一緒にうざ絡みして来る村人の相手ばかり。


 村人は身の程知らずの行動に出て、悪徳領主の息のかかったもの諸共、レーナによって返り討ちにされてた。

 非道な輩の成敗は見てて気持ち良いけど、私は下卑た楽しみから、絶望の悲観へ叩き落とす感情はとくに好むわけじゃないの。アルプ達もそれは同じで、自業自得ざまぁくらいが好きだ。


 レガトはその点、いい素養を持ってる。どこから見てもふてぶてしくて、私達と波長が合うくらいだからトラブル気質も充分兼ね備えた逸材だわ。くっついていればずっと美味しい目を味わえそうだ。


 だから、レーナとレガトのどちらについて行くかは私もアルプ達も迷ってレガトについてゆく事に決まる。

 レーナはアリルとしばらくダンジョンに潜るというから、つまらないと全員の意見は一致した。

 

 私はサンドラに頼んで、商会からメイド服を支給してもらう。帝国でいたずらしてまわった時の事を、まだ覚えている暇人がいると面倒だから変装したのだ。レガトは大事な御主人様のお子様だから丁度いい。


 メイド服にしてから、レガトが変に意識してよそよそしい態度を取るようになった。たぶん私のメイド服姿に、心を奪われて惚れちゃったのね。

 なんだかんだレガトも男の子だから仕方ないわよね。


 初心な少年をからかうため、ラグーンのギルド職員になった。もちろん私は、サンドラやレーナの知り合いという立場を利用したので問題なかった。

 ちゃんと二人共私の身元保証人になってくれたし、金級冒険者のアリルまでサインくれたので効果抜群よ。


 クォラっていう実質ギルドマスターの男が盛大なため息をついていたけど、娘のミラが新人としてやらかさないか心配なのね。

 親バカも程々にしないと嫌われるよ、と思った。ミラはいい娘だし、仕方ないから少しくらい同僚としてフォローしてもいいかな。


 ラグーンの新人の受付は暇だ。街の人口の割に新人冒険者の数が極端に少なくて、子供達もレガトを除くと決まった数人しか受付に来ない。


 このままだとレガトは友達欲しくてラグーンに来たのに、ぼっちになっちゃう。新人冒険者は年が離れてるから無理だと思うけど、この孤児院の子や農村の子達となら仲良くなれそう。


 グズグズして機会を逃すわけには行かないから、手を貸して上げればレーナにも褒められるかな。


 私は報酬を受け取りに来た農村出身の男の子に雑務ばかりじゃなく、探索や採取に行かないのか聞いてみる。


 なんか嫌そうにな顔をしていたけど、気のせいよね。守秘義務あるし、私は職員ですから具体的な額は言わない。


 でも見習いの雑務を一日がかりで十件受けるより、銅級になって正規の依頼を受ければ一人でもその倍は稼げる、そう教えて上げた。

 レガトなんか一日でその五倍稼いだ日もあるからね。なんか顔色悪く震えていたけれど、興奮したのかな。


 さあ、とにかくこれでうまく行けばレガトにも友達が出来て、ぼっちも卒業だね。子供同士なんてすぐ仲良くなって、一緒に冒険へ行こう! なんて青臭くパーティー組んで冒険に行くんだから。


 そう思っていたのに、あれ? レガトに向けられる目がおかしい。

 さわやかに仲良しこよしが見られると思って、お酒とおつまみまで用意したのに。


 このままでは非常に不味い。私がけしかけたように見られたら、後でレーナに何をされるかわからない。

 私の危機を笑ってないで、レガトのフォローしないと貴方達も同罪だと言うわよ。


 アルプ達は私の失態を笑うのをやめて、迅速にレガトの意図を察して子供達に武器をしっかり握らせる。


 違う、違うってば。レガトが魔力制御失敗したら私達だけじゃなくて、街ごと吹っ飛ぶのよ。武器なんかいいから、衛兵でも職員でも急いで呼ぶのよぉ!


 子供達を焚き付けたのがバレるといけないので、私はしばらくラグーンを離れた。なんかミラとか同僚から経緯をあれこれ聞かれ、尊敬の眼差しを向ける娘までいた。


 きっと粗捜しをしてレガトやレーナに報告するつもらりだろうけど、そうはさせないわよ。


 子供達の友情を結ぶのに失敗したので、レガトと年の近いと思う新人冒険者達を探しに鉱山ダンジョンへ向かう。


 歩いて半日程だというけれど、私ならさらにその半分くらいの時間で済むしさ。仕事はキラキラした目を向ける同僚がやりたそうなので譲っておいた。


 うるさい副ギルドマスターおじじの声が聞こえた気がするけど大丈夫、やれば出来る娘だもの。


『土竜の宝物庫』の前は、冒険者達により基地のように整備されていた。


 私の探す新人はその中で一番ボロい建物を使っているみたい。それにみんな鉱山に行ってしまっていない。


 冒険者達はいったんダンジョンに潜ると、いつ帰ってくるかわからないのよね。待つ間は暇だし、せっかくなのでレガトが将来拠点作りをする為の参考に、基地の中を見ておく事にした。


 基地の中には、なかなか強そうな冒険者達が沢山いた。帝都在住の冒険者達から、パーティーメンバーを選出して集められやって来たクランだって、ミラが言っていたっけ。


 この人達に話せば新人冒険者の何名かを、レガトの所へ行くように言ってくれそうね。


 私はクランの基地で一番大きい建物へ行く。レガトとなるべく近い年齢の子を捜すのは大変だから、資料を見せてもらうつもりだ。


 アルプとインプがちょうど書類の束を持って来た。なんか雇用契約書とか書かれているけど新人君達の事も、きっと書いてあるわよね。次の新人君のためにアルプに新しい用紙を替わりに入れておくように伝える。

 ギルドに用紙をわざわざ取りに行かなくて済むための、気遣いってやつね。


 ケルプも鉱山の地図を持って来てくれた。レガトが探しに行く時に、これがあれば道に迷わなそうね。汚れているからこれも新しい紙と替えておいてあげましょう。本当に私って親切よね。


 私は書類を受け取るとラグーンへ戻る事にした。なんか基地の中で騒ぎになっていたけれど、衛生管理出来てなくて虫でも沸いたのかもね。



 本編は完結してます。 


 追記部分は別視点で、本編をなぞる形ですが、うまく話しが噛み合ってなかったらごめんなさいです。

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