『異界の勇者』との対決
テンベール聖教国の宮殿の消失は大陸一つ挟んでいたためか、帝国まで情報が届くまでに二月以上かかった。パゲディアン大陸の商人達も混乱していただろう。
空を移動する僕達と違って馬を走らせる事になるにしても、確認しに行って帰るまで往復には時間がかかる。
ギルドの連絡網はムーリア大陸の帝国や都市国家群は協力的だったけれど、他の国のギルドはエルデン王国をはじめ、国の交流がなかったり、仲が悪かったりで伝言は上手く伝わらない事は多かった。
それでもエルデン王国は、今回は融通をきかせた方だと思う。ただ僕らが帝国へ戻るのを知っていたので、自分達からあえて知らせなかっただけだった。
僕らもわざわざ口外はしなかったからね。ちなみにアリルさんは母さんとスーリヤ、カルジア、ガリア、マーシャ、オルティナ、を連れてテンペクトの新帝都へ、生き残りの教団殲滅に向かった。
ヤケを起こして帝国民を巻き添えに何をやらかすかわからないから、情報が届く前に潰すつもりのようだ。
「ファウダーは行かなくて良かったの?」
拠点作りの休息中に、シャリアーナがか聞いてきた。
「母さんとカルジアが行く所にファウダーまで行かせたら、別なトラブル巻き起こすからね」
似た理由でティフェネトとリエラさんも置いていかれた。アリルさんが皇帝陛下に見つかった時に、ティフェネトがいたらぶん殴りそうで危ないからね。
リエラさんは単にうざいからと、出掛ける寸前に戦艦の着水池に沈められていた。
「それにもし神がやって来たのなら私が近くにいた方が良いと思います」
まあ、拠点作りを自分の手で作り上げるのが楽しいみたいで、かつての教団の仲間達はどうでもいいみたいだ。かつての信徒を心配しどうこうしようとするのなら、僕らと一緒に来てないだろうからね。
「確かにそうね。それで神ではないけれど、関連する何かが近づいてる。レガトに知らせてって、ユグドールが言っていたわ」
ユグドールは古代遺跡の主として『ラグーンの熱帯林』の情報が感覚に伝わる。本命ではない輩が来たのかもしれない。
「シャリアーナ、ここに入り込まれると面倒だから、みんなに知らせて外周を先に仕上げるように伝えてくれ」
「レーナさんがいないタイミングに、来ないでほしかったわね」
「勇者らしいから、そういう勘みたいのあるんじゃないかな」
「『異界の勇者』には危険を察知する力が多少ですがあります。聖杯には罠がありますが、レーナ様の力でわからなくなってますからね。」
所縁ある力に引き寄せられたのか、それとも彼らは聖杯が何か知っていてやって来たのかもしれない。あちらの世界の住人なので、縛られるのは嫌だとしても、いなくなられても困るのかもしれない。
ひとまずユグドールには手を出さないように伝えて、僕らは対勇者パーティーを編成した。




