寂しい空間
僕達はエルヴィオン大陸に寄り、エルフ達にテンプルク聖教の宮殿を破壊した事を伝えた。
大陸ダンジョンの消滅によって人の流れに影響が出て、エルデン王国にも余波が来るかもしれない。
エルフ兄妹は僕達とラグーンへ行くと決めたようで、両親に挨拶に行った。
僕はハープとホープとファウダーを連れ出して霊樹の巨木を登っていた。
ファウダーは神の巫女としてずっと宮殿に籠もっていて外の世界を知らなかった。
「海を見たのも初めてだったの?」
ファウダーの言葉に驚く双子だったけど、君達も海を見たのはつい最近の事だよ。僕は先輩面してあれこれ話しかける双子に野暮な事は言わず、霊樹の実を収穫する。薬の素材にしたいので交渉してみた所、この巨木の実なら好きなだけ持っていけと言われた。
「大きいから十個もあれば充分だよね」
ホープが両手一杯の大きさの実を落とさないように気をつけて自分の武装艇にしまう。
エルフ達も収穫は工夫していて、筒状の網を実を通しながら上手く収穫していた。
エルデン王国を出た後はラグーンの新しい拠点へ帰還した。そんなに長い間、留守したわけじゃないのに心配を掛けたみたいだ。お土産も一杯あるし、用件だけさっさと済ませないとね。
僕は母さんとユグドールとファウダーを伴って、古代遺跡へ向かった。
「ユグドール、ここを使うのはいいとして、お宝とかどうするの? 神がやって来た時に全部持ってかれるんじゃないの」
僕達が預かってあげようと言ってるのに、中々了承しないんだよね。
《我の宝は渡さぬぞ》
ユグドールは母さんに頼み込んで、お宝の全てを回収して預けていた。
僕が母さんに頼めば、母さんがそのお宝をくれる可能性は高いのにいいのかね。
まあ、龍のお宝には興味はあるけど回収は後にして、僕らは聖杯を宮殿に元々あった部屋の倍以上の広さの部屋に置いた。
罠も何もない部屋にポツンと置かれた聖杯はまるで神そのものを暗示しているように見えた。
「何か違うものが掛かりそうな気がするよね」
こんな僻地にまで来ないと思うけれど、本人達も自分達が縁を持つ存在に引かれてしまうのに気づかずにやって来そうだった。
「ファウダーの造ったアピスガードを、罠がわりに置いていくか」
僕は三人を先に行かせた後に、アピスガードを二十体程召喚してみた。ファウダーの操る石像はいないので脅威度は低いけれど、気休めの嫌がらせくらいにはなるかな。
母さんが僕の行動で過去の怒りを思い出したので、アピスガードは母さんの魔力を受けてアピスロードになっていた。




