フォルンの街
『黒魔の瞳』を挟んで反対側にあるフォルンの街も、ダンジョンから半日近く歩いた距離にある。
キールスより先にある街だからか、ダンジョンまでの道のりは冒険者達の足で踏み固められ通りやすい。
途中から街道として整備されていて、乗り合い馬車を用意するつもりのようだ。
ギルドの実力も高く、銀級冒険者が何名かおり、『黒魔の瞳』攻略もキールスよりも進んでいる。
「帝国のツテがあるにしてもさ、ベルクがこっちに売りに行かないわけだよ」
エルヴァが街の活気ぶりや、ギルドの依頼状況を見て納得する。狩り場となるダンジョンやフィールドの位置的にはキールスが一番条件がいいようだ。
フォルンは都市国家群から流れてくる者達からは、一番便利に使える位置に街があった。
冒険者の来訪者の数は、帝国側より都市国家群の方が圧倒的だ。都市国家の成り立ちが、冒険者ギルドを母体としている所が大半だという理由もあるだろう。
ギルドがあれば、クランもあり、パーティーとなると更に数が増える。人口は帝国の方が多いだろうが、冒険者の数は都市国家群が圧倒的になるわけだ。
フォルンでは丁度『黒魔の瞳』関係の依頼が貼られていた。素材募集が常設になっているあたりが、勢いの差を示している。
ただ素材募集にタウロスデーモンやタウロスキングの角やロックゴーレムの核は掲載されていたが、一つ目竜については情報がなかった。
「キールスから来たってだけで、あいつらにバカにされそうだね」
サンドラが不愉快な視線に警戒を促した。エルヴァもサンドラも、ハッキリ言って目立つ美人だ。ラクトもクォラが若いので、トラブルになるとすると俺が絡まれそうだった。
ホルンドールなどでは隊商護衛だったため絡む輩はいなかったが、ここは冒険者が闊歩する街らしく、面倒事になりそうだという予感がする。
ギルド内の冒険者のルールについて確認する。一応、冒険者同士の喧嘩は罰則ごつく。ただルールは曖昧で指導とか、稽古とか絡んできた相手に都合のいい言い訳が通る場合がある。
とくに俺達は、ここでは他所者だから不利だ。あちらが悪くても処分はこちらになりそうだ。
ニヤつく髭面の冒険者パーティーを見て、俺はため息をついた。




