候補者達
帝国内に不穏な空気が漂い始める。現インベンクド帝国皇帝が病に倒れたためだ。
病状の悪化の情報が帝国内を巡り、人々の注目は当然次代の帝国を担う皇子達に集まる。
第一皇子のイングベイは皇太子として育てられたものの、凡庸で侍女達にすぐに手を出す女癖の悪い事で評判の人物だった。
それでも皇太子としての立場は強く、凡愚故に操りやすいと考えるものの支持を得ていた。
第二皇子のベネルクトはまだ十六歳だが、東部と西部の有力貴族の子らを側近とする才器ある若者だった。
中央貴族と折り合いの悪い西のロズベクト公爵も味方につけたと見られ、跡目争いの一番の有力候補だと言えた。
第三皇子のイーリクトは陰気で物静かな少年だ。まだ十三歳と、皇帝の座につくのは厳しいという意見が多い。
最後は第一皇女のベネーレだが、まだ十歳と若い。跡目争いに勝利した兄達が、功労ある者への褒美として与えられて終わると囁かれていた。、
跡目争いの本命は第一皇子と第二皇子の争いというのが政治に携わる者達の声だ。
そうした不穏な状況ではあるものの、僕達には何も出来ることはないのでいつも通りに冒険へ出かけるのみだ。
学校に関しては引き続き通いたいものにはクランから費用を出すことになっている。
学ぶことが、クラン全体の利益になるので、反対するものはいなかった。
皇子様が帝都へ去ったのでアリルさんは僕達の訓練を再開していた。
ロドス近くのフィールド型ダンジョン『騎士の集い』に潜り、大人数での戦闘も体験しに行った。
帝国にのしかかる重たい空気が消え去ることはなく、皇帝陛下の亡くなると言う情報が各都市に寂しく伝わってきた。




