跡目争い
アリルさんと皇子様との事は母さんと、婚約者候補のノイシアに任せ僕はシャリアーナと、他の側近と話す事にした。
「それで、アリルさんを引き入れたい理由は何?」
「察しがいいな。端的に言えば跡目相続争いに備えたいって事だ。」
リキッドが腹を割って話してくれた。アリルさんを味方につきると共に僕らを、特にシャリアーナの心象を良くしたいのだと感じた。
「東部と西部の有力貴族の子。偶然じゃないわね」
「鋭いね。我々は殿下に次代の皇帝の座についてもらいたいと思っている」
「殿下が暴走してしまったが、あのレーナさんが言うように、アリルさんが殿下の第二第三夫人になってくれるならそれはそれでいいと思っているんだ」
争いになった時に単純には戦力がいる。金級冒険者の中で飛び抜けた実力の持ち主を味方につけたいのは、ライバル陣営も同じだ。
「中央貴族が来てないのは、政変を見据えてるって事かな」
ラグーンの事も、跡目争いに繋がっていたかもしれない。シャリアーナはロズベクト公爵に対して人質にもなり得るし、ラグーンから手を引く事を条件に手を貸すように言って来た可能性はある。
僕と母さんであちらの策を潰し回ってますが。つい先日、中央貴族の一つを傘下に収めて来てます。
「情に訴えてでも味方にするつもりで来たのに」
うまく話しが進まなかったようだ。
結局結婚の話しは保留、殿下がアリルさんに好意を持って接している間は僕らも味方になるだろう。
面会は最後はグダグダで終わったけれども、アリルさんはベネルクト皇子の事を嫌ってないのがわかって安心したようだ。
邸へ戻って来た後、アリルさんはぐったりしていた。まさかの裏切り者がすぐ側にいたからね。
皇子様との話しは僕らにもいずれ関係してくる内情だったので、シャリアーナはリグ達を連れて一度ロズベクト公爵の所へ向かった。
翌日、学校が休みという事でみんなでダンジョンへ向かった。
アリルさんが憂さ晴らしに大暴れしてみんなが引いていた中、スーリヤとシャリアーナ達のアリルさんへの傾倒はなぜか増々深まっていた。




