太古の龍神
今まで見たなかで一番大きな遺跡の建物の内部は空洞、つまり何もなかった。何もないというのは小部屋とか、罠とか迷路のような通路とか、そういうものが一切ないというものだ。
奥の玉座とも言うべき台座には三十Mを超すドラゴンがいた。
グレムバイパーを倒した僕らは自信があった。大型の魔物をいくつも倒したからいけると思っていた。
しかしこのドラゴンは別格だ。ドラゴンの吠える声には恐怖が宿る。魔法による精神干渉で恐慌に陥る事もある。でも、まだドラゴンは何もしてない。
このドラゴンには勝てない、それは僕だからわかった。言うなれば理外の存在。母さんと同じような力を感じる。
そしてそれはドラゴンにもわかったようだ。
《久しく見ない徴を感じるぞ、人の子よ》
僕の頭にドラゴンの声が直接響く。
仲間達は動けずに固まってる。時間が、この空間の中だけ止まっているかのようだ。
「グレムバイパーは、ここを訪れるもの達への囮なのです··か?」
強者を篩にかけると言えば聞こえはいいけど、単なるこのドラゴンの戯れ。僕に用があったのか、最初から僕らは当たりを引いた。
《そなたの読み通りだ。わしの名はユグドール。運命神リーアの世界より、この地を見守る太古の龍の一柱だ》
「僕はレガト。この地の近くの人の街で冒険者をしています」
《王紋を持ちながら自由を愛するとは、まるで彼の者のようなやつよ》
「ええ、僕はまだこの世界のほんの一部しか見ていませんから。出来ればこの瞬間の記憶も封印していただけるとありがたいです」
《面白いやつよの。わしの本体は龍の里の頂きにある。記憶を取り戻し、真理を求めるならば、いずれまた会う事になるじゃろう》
「それはその時の楽しみに取っておきたいものですね」
《それでは時を開放するとしよう》
ユグドールの言葉で、景色が溶けるかのような錯覚と共に時間の流れが戻る。
「あれはリザードン?」
ドラゴンの幻を見た気がしたが、現れたのは大きな龍の戦士と、八体のリザードン。
リザードンは武装していて弱点の炎に耐性を持つ魔法の鎧を来ていた。
厄介なのはアミュラの持つ倍近い長さの三叉の矛だ。僕らより大きい上に、間合いが広い。
龍の戦士はケンプファーレックスと呼ばれるドラゴニュートの上位の魔物だ。重厚な鎧を着ているのにも関わらず、四本脚のリザードンより速く駆ける。
「囲まれると押し潰され防御の薄い所を狙われる。追い込まれない方向に動け!」
真っ先にスーリヤとリモニカが左右に散る。リグ、ハープ、ホープはシャリアーナ、メニー二、アミュラとそれぞれタッグを組んで囲みから抜け出す。
僕はイルミアとケンプファーレックスに向かう。リザードンはリザードンブロスとなって、通常より強いが今の仲間達なら抑えられるはずだ。
「レガト、あいつ跳ぶよ」
翼は飾りじゃないようで、建物の広さを活かして自在な攻撃をしてくる。
魔法は多少効くようだけど鎧のせいか攻撃の大半は弾かれた。
しかし、隙を見ていたリモニカがケンプファーレックスの翼を矢で切り裂く。バランスを失い落ちる魔物に僕は渾身の一撃を加えた。
鱗も硬いがダメージは通った。すかさずイルミアが魔法の土で、ケンプファーレックスの翼を固める。
魔法が効かないならダメージを負わせるのは諦め妨害に回る。イルミアの判断で龍の戦士は再びバランスを崩す。
僕の槍と、リモニカの矢がケンプファーレックスの喉元を切り裂き絶命させた。




