死を振りまく蛇
強化コーティングのお陰で攻撃は通りやすくなった。
ただ体力的な面や持てる荷物に限界があるので、エビルマムートやアーミーアントなどは避けて古代遺跡へと向かう。
「遺跡の入口は変わってないけど中は違ってるね」
建物の大きさや配置がいままでと明らかに違う。
ダンジョンに入る度に生成し直すのだろうか。
そうだとすると相当手こずるダンジョンになる。
「ぼく達が中に入ってる間に他の人が来たら変わるのかな?
その時はぼく達はどうなるんだろうか」
考えられるのは中に入ってる時は変わらないか、中か外かどちらかが強制排除だ。
あとは次に入ったものは別な所に転移するか。
大人数でじっくりお宝探索したいダンジョンだけど、大勢での攻略は許してくれなそうだ。
ダンジョンには人数制限される所もあるというからね。
魔法攻撃をして来るガーゴイルの群は厄介だけど、スタンドアーマーに手間取る事はなくなった。
そして僕らは大きめの遺跡へと入ってゆく。
前回よりも少し小さめなので、挑戦してみようと決まった。
罠を避け案内してくれる小悪魔達が罠と隠れた財宝の場所を教えてくれる。
宝箱の解錠を行うと眠りのガスの罠が発生し、球体の目玉の魔物があらわれた。
ドレインシーカーと呼ばれる悪魔の一種で吸収攻撃をしてくる。
罠で眠ってしまえば、生命が尽きるまで体力を奪われただろう。
何人か仲間が眠りに誘われ倒れ込む。
「シャリアーナ、メニーニ、みんなの介護を。リモニカ、イルミアは迎撃を」
僕は眠りから抵抗出来た仲間達に指示して、ドレインシーカーと共にあらわれたナイトメアシープと向き合う。
眠ったものの精神を喰らうという魔物だが、眠りに耐えた獲物には獰猛になって襲って来る。
「レガト、大丈夫?」
「何とか」
魔法の黒い槍にさえ気をつければ、あとは大きな猪みたいなものだ。
黒い槍は喰らうと体液と、魔力を奪われ眠りに落とされる。
とことん眠らせようとする魔物だ。
宝箱には古びた金貨と、魔法の掛かった剣が入っていた。
「はじめて、お宝らしきお宝が手に入ったね」
眠りの罠から覚めたハープ達は少し朦朧としながらも、お宝は見逃したくないようで、のそのそとやって来た。
いや、その気持ちわかるけど少し怖いよ。
「剣はスーリヤでいいかな」
剣を使うシャリアーナに聞くと、うなずく。
シャリアーナは魔法も使えるからね。
「強化コーティングの剣より魔法の力が強いみたいだから、使い分けるといいかもね」
他の部屋にも宝箱と魔物が見つかり、古びた高級そうな布やランタンが見つかった。
ランタンは魔晶石を使って明るくなるもので、浮遊の魔法も掛かっていた。
「便利だけど、不意を付かれそうね」
魔法の得意なイルミアが頭上にランタンをふわふわさせる。
魔力は魔晶石のようだ。
魔晶石の燃料が切れたら頭に落ちて来そうだけど、実際どうなんだろう。
どのみち明かりが必要なので操作はイルミアに任せた。
そしてついに一番奥の部屋へと入る。
この遺跡の建物の番人は二十Mはありそうな巨大な黒い蛇の魔物だった。
「バジリスク!?」
知識があるのか、シャリアーナが呟く。
「いや、違う。バジリスクは四ツ目のはずだ」
グレムバイパー、死を振りまく蛇と呼ばれる魔物だ。
闇の霧を発生させ、獲物の視界を塞ぐ。
魔法のランタンを照らしているはずなのに、光が届かない。
魔法が殆ど効かず巨大な身体なのに、闇の中で蠢く音も聞こえない。
こちらの音や体温は感じているようで、一番熱量の高いリグが狙われる。
咄嗟に大剣で防いだので喰われずに済んだが、体当たりを防ぎ切れず倒れ込み、グレムバイパーの身体の瘴気を浴びてしまう。
「まずいぞ、レガト! 酸だ」
魔法が効かず、武器まで奪われると詰む。
リグの強化コーティングも溶かされ、金属と肌の溶かされた異臭が鼻をさす。
初手で魔法を封じて巨躯を活かして蹂躙する。
僕は久しぶりに焦りを感じた。




