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逃げた神々と迎撃魔王 第一部 〜 集う冒険者たち 〜【完結済】  作者: モモル24号
レガト編

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腹の探り合い

 ラクベクト辺境伯との面会は謁見室で行われた。辺境伯は中央の椅子に正妻のメレヴィ夫人と並んで座る。

 長男のラグナーと長女のノーラがその両脇に立つ。次男ラドマン、三男ラディット、四男ラクトスは宰相や内政官らと同じ並びで立っていた。


 辺境伯御一家のお披露目会かと思うが、シャリアーナの立場を考えると、一度くらいは大仰な場を持つ必要があったのだろう。

 普段は貴族とはいえ領主として仕事が忙しく、面会も執務室で直接行う。


 形式を殊更重んじたのも、公爵令嬢シャリアーナの立場を大きく見せる演出のためだ。

 騎士団長と騎士達、領兵隊隊長と領兵達もそれぞれ中央の列をあけ並んで待機していた。


 彼らは儀仗的な意味と、冒険者が来るので警備も兼ねていそうだ。

 シャリアーナ達が最初にやって来た時には領兵隊はおらず、文官達やラグーンの有力者達がいたらしい。

 挨拶の度に謁見の間に一々人を集めてられないので、それ以降は省略していたようだ。


「ラグーンの街にも慣れたようだなシャリアーナ」


「ええ、お兄様。ここにいる冒険者のみなさまのおかげですわ」


「腹の探り合いはよそう。何か成果があるようだな」


 辺境伯は僕らの後ろに積まれた荷物の山を見る。結局運ぶのは領兵の人達が手伝ってくれた。


「はい。これらは新しく発見されたダンジョンで得られた品です」


 シャリアーナが少し得意気な表情で言う。辺境伯もかつては冒険者として、偉業を成してきた人物だ。その冒険譚はいまや伝説だ。

 しかし価値で言うならダンジョンの発見はもっと上だ。


 辺境伯は気にしてないが、この報告にショックの受け方の違うもの達がいた。


 一人はわかりやすく悔しがる辺境伯の四男だ。

 僕らのパーティーへ加わっていれば、今頃その名声を得て兄妹たちに大きな顔が出来たはずだからだ。


 もう二人は領兵の中の一人と内政官のうちの一人だ。彼らはしょせん駒だ。

 言われた以上の事はしないが、この発見が中央貴族の耳に入れば自分達の進退に関わりそうだと気づいて青ざめていた。


 辺境伯の指示で荷物の中の素材の鑑定が行われる。見るまでもなくエビルマムートの牙や皮は目立ち、鉱山ダンジョンにも、このあたりにもいない魔物だとわかる。


 北の森で発見報告のなかった魔物を含めると相当な種類の魔物がいると気づくだろう。それに加えてまだ未知の魔物にゴブリン、オーク、トロールまでいる魔境なのだから。




※ 2023年9月30日、ラクベクト辺境伯の長女モーラをノーラに改名しました。


 【錬生術師、星を造る】 にて、冒険者モーラと名前が被り分かりづらいのを避けました。

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