お土産は蜂蜜
逃げ去った男はラグーンの高い城壁を乗り越え領主邸に入って行ったようだ。
はじめは身内や親しい人達で固めていても、領内が発展するに連れて密偵の一人や二人くらい入り込むのだろう。
領主邸の情報が流されているのがわかれば、逆にそれはそれでいいと思う。
アルプが印をつけたようなので、追うときはいつでも追える。
泳がせておけば、色んな人を紹介してくれるだろうからね。
それより今、欲しいのは荷車だ。
馬車もいいけど、馬を飼うにはお金がかかるし、放置出来ないのが困る。
冒険者の中には馬車を使って移動する人達もいるけど、馬車を守るのに荷物番役がいるのかな。
サブパーティーに守らせたり、馬車番みたいな専属の護衛もいるのかも。
鉱山を占拠しているクランはそれに近い形をとっているって話しだった。
鉱山町となると、領有問題になるからね。
トロールの跡地まで歩く道は作ったので、荷車があればゴブリン戦隊で荷物運びをしなくても済むようになる。
ダンジョンがあるとするなら、設営をして、攻略物資を運んでおく方が時間の節約にもなるからね。
やってる事は大規模クランの人達と同じだけど、こっちはラグーンのギルドや領主様側だから何も問題ない。
鉱山はおそらく拠点を作るのに出遅れたか、中央貴族達にうまく共謀されてクランに持っていかれたんだと思う。
こっちもダンジョンが見つかれば、また乗っ取られていたかもしれない。
僕達がいなければの話しだけどね。
最初は乗り気じゃなかったけど、いい時に公女さん達が来てくれたよ。
中央貴族にまとまりがないのも影響しているんじゃないかな。
彼女達を邪魔に思うものもいれば、取り込んで、公爵に対するカードにしたいものもいるようだからさ。
一つの目的には協力しているけれど全部はどうか、と言えば敵対すらしてそうだ。
レミールおばさんから習った政治学を、母さんが僕にも教えてくれたけど、実感が沸かない僕には難しいのだよ。
パーティーホームへ戻ると、ギルドの仕事をサボって来ている暇なメイドに荷車の手配を頼む。
面倒そうにしていたけど、ハニーワスプの蜂蜜を渡したら倍速魔法のような速さで消えた。
意外と甘い物に目がないらしい。
もう二つあるけどこれは食堂のおばちゃんに渡す分と、孤児院の婦長さんに渡すものだ。
今は時間を優先したけど、荷車とか家とか一から自分で作りたいな、と思った。




