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逃げた神々と迎撃魔王 第一部 〜 集う冒険者たち 〜【完結済】  作者: モモル24号
レガト編

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ゴブリン戦隊

 ゴブリンの巣にはゴブリンが二百匹近くとオークが十五匹、それにトロールが二匹いた。数が多い。仲間たちが緊張で強張らないように、僕はまず気持ちを落ち着かせた。


「いいかい、いっぺんに戦う必要はない。アルプ達を使ってまずは同士討ちをさせる」


 あれだけのゴブリンの数だと、上位のゴブリンがいるのは確実だ。僕はアルプとインプを使ってトロールを暴れさせ、ケルプにはゴブリンアーチャーの使う弓矢を壊しにいかせる。


 トロールが柵を壊し突然暴れ出した

ため、近くにいた数匹のゴブリントロールに叩かれ潰されていく。


 騒ぎの起きた間に、リモニカはホープと共に移動してオークの固まっている方に向かう。リモニカの矢は数を増やしてホープが少し持っていた。


 不意をつけるうちに叩けるだけ叩く。ホープはリモニカの背後について偵察部隊やはぐれものを警戒してもらった。


 スーリヤもハープと組んで迎撃に向かう。 ゴブリン集団の中央から炎の矢が飛んでくるが、ハープの盾にうまく隠れながら向かってくるゴブリンを屠る。


 僕は中央から向かい、魔法の使い手を弓矢で先に倒す。アミュラはメニーニと組んで同じ中央からゴブリンを倒していく。


 小悪魔達で引っかき回し、僕たちが三方から攻めたためにゴブリン達は大混乱に陥る。

 しかし中央の小屋らしき建物からオーク並のゴブリンが二匹と、それよりは小さいがローブ姿の頭の良さそうなゴブリンが出てきて、混乱する自陣を立て直した。


「あれは何?」


「ジェネラルとロードだ」


 オークやトロールを従えたのも、ゴブリンロードの力だろう。ゴブリンジェネラルも単体の戦闘能力はオークより上だ。


 被害はまだ一割程度。混乱している間に三割削れはゴブリン達は浮き足立ち逃走をはじめる。

 戦える数が圧倒していても、倒れた仲間の死体を見れば勝手に怯えてくれるはずだった。


 ゴブリンロードは残っていたオーク達七匹とゴブリン三十匹をリモニカ達に向かわせる。


 そしてトロール二匹と別なゴブリン三十匹の集団をスーリヤ達へ向かうよう指示した。


 数の暴力。ゴブリン達は自分達の優位を思い出し下品な叫びを上げる。

 リモニカとスーリヤには敵の迫る前に合流するように指示していたが、ロードはそれを塞ぐ形でゴブリン達を動かしてきていた。


「レガト、リモニカ達が囲まれちゃう」


 僕らにも三十匹のゴブリンと二匹のジェネラルが迫る。ご丁寧にもう二十匹ずつを三方に後詰めとして向かわせる。


 群がられると防御力が弱い所を狙われる。嬲って体力を奪えばゴブリン達は勝てると知っているのだ。


 時間稼ぎの煙幕や痺れ玉をハープとホープが投げるが、無視してゴブリン達は進む。わりと賢いのは指揮官のいるせいだろう。


 しかし、それは緊急時の手段でもあり合図だった。


 僕はそれを見てゴブリンの角を使い召喚する。リモニカとスーリヤにも二十本ずつ用意している。


 手が離せなくてもアルプとインプが二人から角を取り出したのが伝わる。


 僕の召喚は成功した。でもなんか数が少ない。数には数をぶつけたかったのに、三方にあらわれたゴブリンは四体ずつ、十二体しかいなかった。


「ねぇ、これ本当にゴブリン?」


 なんかあっちの本家のジェネラルより立派過ぎる。鋼鉄の全身鎧に大剣、槍、弓、盾のゴブリンパーティーが驚くゴブリン達を迎え撃ち翻弄してゆく。


「ホープ、下がるよ」


 リモニカは隙を逃さずオークを討ち取りながら、ホープと後退し、スーリヤもハープの援護で下がり出した。


 召喚したゴブリン達はゴブリンスタークと呼ぶ事にした。

 ゴブリンの肌は緑がかった色だが、このゴブリン達は灰色だ。ゴブリンジェネラルと同じくらいの体格なのに、ジェネラル達より強い。


「退路を攻撃するよ」


 仲間達に体力回復薬を半分飲ませ、リモニカ、スーリヤ、ハープ、アミュラ、メニー二が裏へ回り込む。

 アルプ達には五人のフォローを頼んだ。


 僕はホープと共にゴブリンスタークの攻撃からあぶれたゴブリンを倒し、ゴブリンロードを狙いにゆく。


 ロードを倒せば統率するものがいなくなり、あとは個別撃破すればいい。


 思わぬ戦力の出現に、再び展開された戦況をひっくり返されて、ロードは逃走しようとしていた。ゴブリン達全てを囮として犠牲にするつもりのようだ。


 ロードがいればゴブリンの集団はまた復活するだろう。

 だけど、それは僕らが許さない。

 僕とホープの接近に気づき戦力全てを投入してしまったロードが、怒りながら範囲魔法を詠唱する。

 味方ごと僕らを焼き殺すつもりだろう。


 だが、詠唱は途切れた。背後からリモニカの放った魔法の矢がゴブリンロードの喉を貫き、突進したスーリヤの剣先が心臓を穿つ。


 ロードの支配力が急速に衰え消滅し、残されたゴブリン達は逃げ出す。

 僕達はゴブリンスタークと共にその大半を討ったが十数匹には逃げられた。


「ほぼ掃討したから、再びまとまるにしても相当時間がかかると思う」


 集まった仲間達は緊張が解けたのかへたり込む。血臭が酷く、鼻の感覚が麻痺していなければ吐き気に襲われただろう。


「これ全部素材回収するのかぁ」


 放置するわけにもいかず、僕らは素材回収を行う。ゴブリンスターク達は周囲の警戒を行わせた。


「レガト、なんかこのゴブリン達凄くない?」


 興味深いのかハープが素材を集めながら話しかけて来た。


「冒険者の階級のように、魔物にも上位種があるの知っているだろ?

これは、さっきのジェネラルやロードと強さの段階では同じ位のやつだと思う」


 呼び出すイメージとして、クロードのおっちゃんの所で見た全身鎧で着飾るゴブリンと、目の前でいま見たゴブリンジェネラルの姿が重なった覚えがある。


 一体あたりゴブリンの角を五本使い僕の魔力に制限がないから、ああなったのかも。ゴブリンロードよりも知性を感じるもの。


 たぶんゴブリンの言葉、古代エルフ語を話せるなら会話で意思疎通も簡単に出来そうだ。

 喋れないけど、こちらの言葉も理解しているみたいだ。

 ゴブリンは元来、家の雑務を行わせるためにつくられた存在だと聞いた事がある。召喚者である家主が亡くなり、残されたゴブリンが野生化して生き抜くうちに残忍で凶暴化したとか。


 ゴブリンの話しはともかく、集めた素材や武装などゴブリンスタークに持たせ運び出す。

 子供だけの冒険者と十二体の全身鎧のゴブリンが移動する姿は、なんともちぐはぐで見た者を混乱させた事だろう。

 森の中とあって目撃者はいなかったけどね。





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