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逃げた神々と迎撃魔王 第一部 〜 集う冒険者たち 〜【完結済】  作者: モモル24号
レガト編

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湧いた頭

 ないものねだりは出来ないので、絡まれた時点で僕が世の中の厳しさを教える事になりそうだ。

 そういう僕もまだ八歳なので、どっちが舐めてるんだって事になりそうだけどね。


 森で採取依頼の品を集め、いつものようにギルドへ向かう。

 いつもと違うのはギルドの敷地近くにズリッチとマーズクいう名の少年が二人と彼らの弟妹三人がニヤつきながら待っていた。


 最近はずっと焦り苛立った顔だったのに、ようやく意を決したのだろう。発想がドチンピラ過ぎるよ。

 ギルドの外で待っていたのは、ギルド内での喧嘩は禁止と知っていたからかな。人目を避けたかったのもあるのだろうね。


 僕の姿を確認したズリッチは、その手に中古の鉄の剣を持って近寄ってきた。

 街中でそんなものを振るえば通報されて捕まるんだけど、誤魔化せると思ってるのだろう。


 ただ僕にはゴブリンが、拾った剣を持って調子に乗っているようにしか見えないよ。


 それに彼らにとって残念なことに、お酒と串焼きを手にしてワクワクしながら観察しているギルド職員がいる。

 見物はいいとして、そんなもの買ってくる暇あるなら止めてよ。


 多分、いや絶対に母さんに報告するつもりはないだろうね。


 メイド姿という馬鹿みたいに目立つ服装のギルド職員。その目の届く所だというのに、ズリッチは剣を手にして僕に脅しをかけた。

 金を出せ、要約するとそう言った。


 痛い目に遭いたくなければ出すもの出せと、再び剣を突きつける。マーズクは錆びついたナイフで威嚇している。そんな構えではカスリもしないけどさ。


 兄達を尊敬の眼差しで見る弟妹が囃し立てる。兄達が英雄にでも見えているのだろうけど、普通にただの強盗恐喝犯なんだよ。


 年下の僕が大金を得る所を何度も見せつけられている。何も知らない、いや知ってて知らないふりをして他人(孤児達)の稼いだお金で遊ぶ弟妹は、僕のお金にも目をつけ、兄達にせがんだ。


 ヒルテの調べでは、ズリッチは十四歳で、あと一年で成人だ。

 手にした剣は、孤児院の子らの上前をはねたお金で買ったのだろう。

 剣を持てば冒険者に英雄になれる、そんな夢でも見ているのかもしれない。


 他人を脅し搾取したくせに、そんな奴の夢の成功なんて僕が許すわけないだろう。


 僕は冒険者が好きだ。親子三代で冒険者をやっている。

 どうしようもない輩も中にはいるけど、冒険者として道を外れたなら退治するのも仕事の内だ。冒険者の先輩として、冒険者の流儀でもってわからせてやるさ。


 僕はズリッチとマーズクの武器を気づかないように、彼らの手から離れないようにする。

 僕を囲う弟妹にも僕の予備のナイフを握らせる。なんでそんなものを手に持っているのか、興奮して気づいていない。


 五対一で武器を持って襲いかかる犯罪者の完成だね。ヒルテがわざとらしく悲鳴を上げたせいで、観衆も集まり出している。


 先程までニヤついていた五人の子供は慌てるが、動かした切っ先が僕の肩に刺さり傷を負わせる。


 観衆からはニヤつく子供達が、無防備な子供に襲いかかったように見えた。まあ、そう仕組んだ。

 何人かが領兵隊の所やギルドに応援を呼びに行く。

 騒ぎがいつの間にか大きくなって慌てるけれど、もう舞台からは逃げられないよ。


 本当はぶん殴って終わりで良かったんだけど、弟妹の性格が歪み過ぎて気持ち悪かったのだ。

 あとメイドのわざとらしい演技のせいだな。

 街のみなさん、お酒とつまみを抱えて叫ぶメイドなんか信用しちゃ駄目だと思うよ。


 ギルドの職員と、冒険者が何人かが五人を取り押さえた。領兵隊がやって来て連行されてゆく。


 武器はもう離せるようにした。細かな魔法は苦手だけど、いたずら目的の魔法は母さんのおかげで得意になった。


 僕は事情を聞かれたが包み隠さず彼らの行いを正直に話した。ギルド側も把握していた事なので、災難に巻きこまれたことを謝ってくれた。










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