何気ない一言
初心者の受付嬢は新人のミラさんで、公都ロドスの職業訓練学校を卒業したばかりだという。
入学条件は特になくて大人でも入れるそうだ。もっとも基本的に初めて入る子供と、一般の大人では学棟が分かれているそうだけどね。
僕くらいの年齢から入る子供もいるらしい。ただ学費がかかるので、貴族や商家など、お金に余裕のあるところの子が大半だけど。
ミラさんは事務や会計や鑑定など、商業系の勉強をしたくて入ったそうだ。冒険者の受付嬢をするにはあると便利な能力だろう。
後ろで揉めてるメイド姿の女性も、じつは何気にそうした能力が高い。
僕も母さんやサンドラおばさんから必要になるからと学んでいたから多少はましかな。
教材はレミールおばさんが結構用意して送ってくれたからね。
「はい。これで登録完了です。改めてラグーンの冒険者ギルドへようこそ、ですね」
ミラさんも精神的にはタフな娘で、僕の後ろの騒ぎは接客で見えてなかった。
受付で登録を済ませたのでミラさんと雑談を交わした。騒ぎの収まったあとは、ラグーンの依頼掲示板を覗いてみる。
常設依頼を見るとギルドの傾向や報酬の割合がわかるらしい。
いくつかの街に行ったけれど、依頼掲示板は気にしてなかったので見ていなかった。
学校もいいけど、経験ある冒険者の何気ない教えも身になるものが多いと思う。
母さんはそのあたりを気にしていた。おじいちゃんや父さんのように、うまく他人に教えられないって嘆いていた。
実際に一人で体験してみると、母さんが嘆く意味もわかった。




